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君が好きかも
体育の時間でバレーボールをすることになった。
目立つのは身体能力の高い男子。
きゃあきゃあ騒ぐ大多数のお嬢さん方。
どうして女子は、こんな黄色い歓声をいとも簡単に出せるのか疑問だ。
一斉にヘリウムガスでも吸っているのだろうか。
その図を想像したら笑えた。
さらに、信憑性の薄い噂話や、自分の恋を人と語り合う行為も好む。
どこの世界へ行っても、揺るがない特徴だ。

「白石くんってな、好きな子おらんのやって」
「告りたいわ」
「あんた告白したら一発玉砕やろ」
「忍足くんはな、桧之さんと付き合うとるで」

最後の一言ちょっと待てい。
耳をダンボに変化させ、ヘリウムガス吸引疑惑が持ち上がる女子の固まりに座ったまま近寄った。

「がせやなかったんか」
「聞いたやろ。『謙也』やで『謙也』。こらもう深い仲築き上げとる証拠」
「せやかてあっちは苗字呼びやん」

勝手に彼女にしないでください。
謙也は私との間に壁を作っているかのように振る舞うし、私は他校のあの人物を想う毎日でございます。
これから授業に戻り、しっかり勉強するのであります。

「桧之さん、教科書忘れた?」

隣の席の蔵さんが、ノートと筆記用具だけの机に注目している。
引き出しに手を伸ばし、中を探るも教科書はない。
しぶしぶ伝えると、白石くんは机をくっつけ、開いた教科書の半分を私の机に乗せた。
なんだか顔が火照る。

「赤面の早さは正常やな」
「どういう意味?」
「財前が『あの人男慣れしてますわ』言うてたから試したんや」

つまり、私が男に慣れていないことがばれたわけだ。

「立海で何かあったやろ。あいつ怒らせると恐ろしいで気ぃつけとき」
「ここ、恐ろしい人多いよね」
「俺込みでな」

財前くんの名前が出るたび、早朝すぎた彼と永年すぎる彼の動作を思い出す。
なんてかっこいい人が多いんだ、この学校は。
女子が騒ぐのも頷ける。

「し、白石くんはすすす好きな人いる?」

そして、私はひとまず目先の彼を知る上でもっとも重要な核心に触れてみた。

“すすき好き好きすすき好き、好き好きすすき好きすすき”

財前家にあったカエルの置物が頭に浮かび、即興でひらめいた早口言葉を何度も唱えた。

「君が好きかもしれへん」

ズキューン! と輝く瞳攻撃を受けてしまい、苦し紛れに応戦方法を探す。

「あ、そや。好きっちゅーたら桧之さん、毒草とか好き?」
「きょきょ……興味はあるかも」
「ほんまに!? なかなか珍しいな、女子でそういうの。俺が知る限りのこと全部教えよか」

にやけてふわふわするあまり、失った平常心。
その流れで返事したもんだから、毒草についての話を延々と語る白石くんに出会った。
徐々に王子様的なイメージが崩れていく。
それでもかっこいいという事実は変わらない、罪なお人。





To be continued.
20091214

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あきゅろす。
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