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二年なら
交差点がいくつもある駅頭をぶらつき、早三十分。
足元を見て進む私は、何かにぶつかり止まった。
石ころ一つ当てられた度合いの痛み。
額や髪が軽傷を負う。
かたくなに押し黙ってきた彼の背中だ。

「メールや」

スルーされ、携帯の画面を覗きたい気分だった。

「誰でしょう」
「部長。全員ついて来る気やったらしい」

そうなればお祭り騒ぎに発展する予感。

「腹減ったわ」
「私はマネージャー魂が減りました」
「何か食い行くで」

すべてがどうでも良くなりつつあった矢先、目の色を輝かせられる提案が舞い込んだ。
隣に並んで返事すると、眼前に人影が現れた。
正体は行く手を阻み、にっこり笑う高校生らしき女の子。

「遊ばない?」
「遊ばん」

綺麗に着飾った甲斐もなく即答で拒否されたら自分ならへこむ。
私は他人事と割り切り、自分の存在を目立たせないよう“街と同化作戦”に入る。

「お姉さんも一緒でいいからさ」

即ばれた。
お言葉だが、財前くんにはちゃんと姉がいる。
心の中を埋める大半はその思考だ。
しかし明かさない。
テニプリ読者は、テニプリ関係者の個人情報を固く守るのだ。

「こっちは腹減っとんじゃあほ。早よどけ、キモいわ自分」

苛々が沸騰間際に到達したか、毒舌というより暴言を吐く。
聞き取れてしまった彼女が、ミュールで爪先部分から電柱を蹴るおっかない行動に出た。
柔らかく断れない男は、再びずんずん歩幅を広げる。
知らん顔も気が引けるけれど、逆ナン相手に財前くんを選ぶ方が悪い。
空腹時は別人格だからだ。

「あっちもお怒りモードだよ」
「当然や。あんな撃退法で喜ぶ奴はマゾヒスト以外おらん」

確かに、と納得した。
やがて定番のファミレスで足を止め、すぐさま踏み入れる。

「ほんまに日曜の午後か怪しいな。大阪やと一人で二席陣取る強者がおるのに」

食事代は財前くんが奢ると言い、おとなしく従った。
いざ注文の品が届き始めれば、「おかわりしよ」のオンパレード。
腹が減っては大阪に帰れぬと言うし、甘えてみるのだ。

「少食ちゃうねんな」
「これが普通」
「家では遠慮して食えへんだけか」
「や〜、よそ様のお宅でご馳走になるのは慣れなくて」

ごまかして箸を動かした。
それ以来会話は交わさず、周囲の音も耳へ届かず。
長い沈黙に緊張してしまう。
なぜ立海を早々に立ち去ったのだろう。
財前くんへの疑問は、この空気を破る彼の言葉で少しだけ解けた。

「希紀が……二年なら良かったわ」





To be continued.
20090203

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