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ジャッカル視点
俺たちは、後輩の練習に応じるつもりで来た。
だがコート前で見知らぬ男女を目撃し、状況は少し変わる。
昨年全国ベスト4に入り、関西最強の名を欲しいままにした四天宝寺中の奴らだ。
今日はオフだが、そうは言えなかった。
女が追い返しづらい迫力を表に出しているからだ。

「視線が痛いっスね」

俺と赤也が練習試合をしようという時に、そこらの取材記者もびっくりな眼差し。
普段浴び慣れている赤也でさえ冷や汗を流す。

「敏腕なマネージャーってことだろ。早く打てよ」

ブン太に急かされサーブの構えに移った。
四天宝寺か。
今年も関西、全国上位に食い込めるかな?

「ファイヤーッ!」
「うわっと」

初めは好調でスタートした。
次第に赤也が追い上げてくるとあの女も落ち着き、試合に見入っているようだった。
蓋を開ければスコアは4―3、俺の劣勢だ。

「財前だっけ。どうだ、打ってかねぇか」

審判役が定位置から離れて他校の部員を誘う。
呼ばれた男は気だるげに観戦ゾーンの仕切りに座った。
部活と違い、周りがうるさくないため声はよく聞こえる。

「御免こうむりますわ」

急に打球をガットで受け止める赤也。
返してくるかと屈んだら、回転中のそれを右手で掴み財前に指差した。

「おい生意気だぞ!」
「よせ赤也。お前が言うな」
「う……」

空気は絶対悪化させまい。
そんな心を宿したツッコミが効き、修羅場につながらず収まる。
勝負は一時中断の影響で後回し。
何を考えてんだか……ブン太め。

「俺の天才的妙技の餌食にしてやるぜぃ」
「自信満々に言いますね。うちの先輩と被るんでやめてくれません?」

先輩とは誰を指しているのだろう。
口の聞き方が、まんまかわいげなしの赤也だ。

「お話うかがってよろしいですか」

やり取りを眺める間、暇な俺に女が近寄る。

「ほな、ここらで帰りますわ」
「なぜ!?」

その後頭部をはたき、財前はノートに何かを書き隠していた。

「ボケ希紀。言う通りせいや」
「こればっかりは従えません。だってジャッカルくんと話してない」

悔いるところが妙にずれている。
北門へ立ち去り行く珍客に抱く印象は最後まで変わらない。

「ジャッカルと話したかったみたいだぜ」
「モテモテじゃんジャッカル先輩」
「ブン太や赤也とはもう話したからついでに俺とも、ってパターンだと思う。学校でもそうだし……」

引きずられる女が完全に消え、穏やかさ一色の光景は久々な気さえ起こさせた。
これより試合を再開する。






To be continued.
20090123

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あきゅろす。
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