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お約束展開
萌え博士の活動は、萌えの対象を追っかけて観察することにあり。
これで唇を奪われてしまえば立場がなくなる。
反射的に後ずさりに走ろうとのけぞった。
何だこれ。
体動かない、っていうか……。

「体張ってまでお約束展開用意しなくていいからね!」

小春ちゃんが両足を抱き締めるように拘束したのが原因であった。
もし気づかずあんなことこんなことをやらかしていたら強制退場ものだ。

「財前くんってば怖ぁい。もっと優しくしなさいよ」
「構へん。がんがん言うたれ財前」

かわいい顔のわりにずいぶん厳しい隣の男。
彼も冷たく当たってくるタチだ。
解放されたため挨拶しに行くと、小春ちゃんを隠して吠えた。
目に映すな汚らわしいと言いたげな意思さえ伝わる。

「これ以上寄るな」
「もし寄ったらどうします」
「死なすつもりで死なす」

握り拳を胸の前に作り、堂々と殺すと言ってのけた。
平然さが非常に恐ろしい。
まともにくらった直球勝負の告白、返事は待たせておこう。

「あら、みんな部活始めちゃってるわよユウくん」

不意に呼ばれて一氏くんが勝ち誇る。
解釈しづらいがそれだけ喜びが大きいのかもしれない。
二人は仲良くコートの外に出ていき、親指ツン男も姿を消した。
私、マネージャーだよね。
今は確かみんなに紹介する時間だよね。

「よろしゅうな。石田……ちゅーても名前は知っとるんやて?」
「石田のあにさん! だ、誰に聞きましたか」
「うちの部長や」

曇りがちな天気に左右されるかされないかの瀬戸際で助かった。
マネージャーたるもの、どんよりしていてはだめだ。
急いで私は石田くんをあがめる。

「こんにちは。お名前と住所じゃなくて名前を聞かせてください!」

三十秒経ち、副部長の直撃取材に向かう。
ところがなぜか意外な表情で不信感を募らせている。
そこでようやく理解した。
テニス部レギュラー及び彼の名前は調べてあると白石くんが教えたこと。

「蛙叩きで後頭部をど突かれてど忘れしました」
「モグラ叩きやろ。はい名簿。一人ずつ聞いて回らんとそれで覚えとき」

噂をすれば、なんやかんやで本人がありがたい一冊を携えて話しかけてきた。
後頭部にぽんぽん当ててくる名簿を受け取る。

「千歳くんとやらは見かけないね」
「喰った」

左腕を上げ、にこにこ。
萌え博士キラーの微笑みで、にこにこ。
かわいこぶって「白石くんすっごぉい!」と態度を急変しても見抜かれるだろう。

「桧之さんも引っ掛からへんタイプか」

騙しが通用しないと悟り、毒手はしまわれた。
なんせ私は金ちゃんの持つ純粋さの欠片を求めている身。
なんせ小春ちゃんを見せてもらえないくらい汚れた存在だ。
次回、《私の存在の必要性はありますか》での挽回にご期待ください。





To be continued.
20080817

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