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水かけ小僧
夕飯を作るまでの三十分間休憩となり、遠山は奈留を遊びに誘う。
けん玉やブーメランなどの遊び道具は持っておらず、どうするか考えた末、外で走るという遠山の提案に賛成した。
場所は河川敷。
耳をすませば、規則正しい水音が伝わる。

「必殺・ウォーターショット!」
「冷たいやないの〜」

そこで先客を見つけた。
休憩時間を迎えると真っ先に消えたダブルスコンビは、どうやら一足先にここで遊んでいたようだ。
脱ぎ捨てた靴と靴下が水辺に散らばっている。
やがて見物人に気づき、ひとまずはしゃぐ体を休める。

「シンクロはしないの?」
「さっき深いとこ行ったらめっちゃ濁っとって、しゃあないから浅瀬に移動したんや」

学校では池の深い所に潜り、足を開く閉じるの動作を繰り返しているため、二人と水のイメージは“シンクロ”以外にない。
奈留の問いに答えながら、一氏は河原であぐらをかく。
日差しが照らすそれぞれの影。
どこに光が当たろうと、真っ黒に染まったまま、明るさ暗さすべて包み隠す。

「奈留ちゃんも入り。ほら、ジャージ捲って」
「えっ、だけど私」
「いくでー!!」

いつの間にか服を脱いだ遠山が水に浸かって肩をぐるぐる回し、中腰状態よりも低くかがんでいた。
なんとなく嫌な予感がする。
金色はとっさに手を引っ張り、よけさせようとした。
しかし、奈留は思いきり水をかけられてしまった。

「やりすぎや」
「ワイ、かけただけやで」
「ちょっと手加減したれ。水かけ小僧」

しずくが地面にぽたぽた落ちる服は、どれほど絞っても乾かない。
風邪をこじらせては大変だ。

「着替えあるよね?」
「それが……ごめんなさい」

寝巻き以外の服が入った袋は家に忘れた、と口を濁し明かす。

「すまん奈留。もうやらへんわ」

こちらは大きな岩のてっぺんから、顔の前で手を合わせて反省する。

「頭上げて金太郎くん。天気いいし、干せば乾くよ」
「そりゃそうやけど、もうじき夕焼けよ。濡れた格好でご飯作るわけにはいかんやろ」

合宿に不必要な物を金色はいろいろ持参した。
中には、一応まともに着られるコスプレ用や女装用の服もある。
自分が貸す方向で事態を片付けるのが得策と考えを定めた。
ちょうど聞き慣れた下駄の音が辺りに響いたのは、その頃だ。

「千歳ぇ!! 奈留に服貸したってぇや!」

遠山らしい優しさが詰まった唐突な発言。
絶叫に近い呼び立てがチームメートの足を止める。






To be continued.
20091221

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