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きらきらした目
「手伝わねェっつった野郎は俺の前で切腹しろォ!!」
「助けてェェ!!」
「ぎゃあああ!!」

堂々と刀を抜きながら、近くにいた隊士ともども追いかけ回す。
頭に血が上り、本当に斬りかねない恐ろしい形相だ。
離れていくマヨ友の影。
暴走とはいえ、元を辿れば責任は自分にある。
言うか言うまいか迷ったが、状況の打破につなぐべく梨沙は大きな口を開いた。

「土方さん!」

数メートル先の尖り男がその声に動きを止める。
これほど大勢の人間が集まっている中で叫べるんだと、驚きと感心の思いで。
か細い足がゆっくりと土方のそばに進む。
近づくにつれて歩く速度は上がり、あっという間に前を通り過ぎた。

「おいィィ! 何か言うことねェのか!」

真顔で向かってきた女にスルーされて勢いよく転ぶ。
彼女はとにかく騒ぎを止めたかった。
それに買い出し当番であることをすっかり忘れており、外に出たかっただけだ。
伸びきった山崎たちも放置して一人消えていった。

「やっと逃げ切れた……」

ここのところ、猛暑続きで食事の栄養バランスには気を遣う。
屋外中心で働く真選組は、今日も暑さに参りつつ仕事を終えてくる。
冷たいアイスでも一緒に買って帰ろうと財布を見たその時。

「何だ回り道か?」

前方五メートル付近。
さっきまで走り回って屯所を騒がせた土方が、もう仕事をしていた。
煙草を吸っているものの、警察らしく振る舞う。
壊れっぱなしの普段と違う真面目な雰囲気は梨沙にも伝わった。
そして動かずに止まれば、じろじろと周囲から視線を注がれる。

「んなかっこで出歩くなよ。尚更注目されるぞ」

やたら地味な着物に袖を通した神経を土方は疑いたいようだ。

「こんな物を着てると落ち着くんです」
「きらきらした目で言われてもな」
「こんな物を着てると落ち着くんです……」
「急に暗くなんなよ」

彼は怒っていない。
だが目を合わせると、瞳孔のせいか誰が見ても恐ろしく映る。
次第に長く雑談していることを何人かの隊士が無言で訴えかけられ、

「マヨネーズ買ってきてくれ」

お使い言葉を残し、パトカーに乗って街に消えていった。
土方は数々の攻撃に耐えられなかったのか。
はっきり断りきれないまま聞いてしまったが、内心小さく梨沙は「嫌だ」と反発した。
鞄を胸の位置に持っていき、両手で抱える。
よっぽど大事な物が中に入っているのだと通行人は思うだろう。

(いざスーパーへ急ぐ足)





To be continued.
20081005

[*前]

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