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プロローグ
江戸の繁華街、かぶき町。
開国から二十年が経ち、目まぐるしい時代の変化に対応してきた。
それなりに賑わいを見せるこの地では、日夜いろいろな人間や天人が行き交う。
チンピラやヤクザ、キャバ嬢やギャルといった個性豊かな面々の巣だ。
食堂に居合わせた客が揉め事を起こすのも何ら珍しくない。

「おーおー、でけェ態度とってくれるね。ただの女が」

薄毛のおやじを筆頭にいかつい集団が取り囲む。
相手は生身の女。
皆揃って腰に刀を携え、余裕からくる笑いが終始止まらなかった。
関係ない客は迷惑そうだ。
ゆりがのれんをくぐった時、すでに輩はばか騒ぎしていた。
豆まきと称し枝豆を他のテーブルへ投げ込んだり、どんぶりをシャワーっぽく浴びたり。
食堂という場所を履き違えた行動が見受けられる。
やかましく怒鳴るだけ無駄だ、と関わりを避ける客ばかりの中、彼女は一人立ち向かった。
枝豆にわさびを塗りたくり、薄毛のおやじの目に入れる。
ところが叫びも倒れもせず、赤々とした血眼でこう言い放った。

「食いもん粗末にしようがてめェにゃ関係ないべ」

おやじにとってはコンタクトレンズなのだろうか。
ぎゃははは、と見下げて笑いながら抜いた刀でゆりの首元を斬りつける。
もう枝豆は切れた。
目にも止まらぬ速さでおやじが飲み込んでしまったのだ。
枝豆で応戦する手段を奪うとは大したもの。

「黙れ」

そこに、渇いた声で割り込む若い男。
集団の頭と思わしき薄毛の背後に回り、言葉通り黙らせる。
獲物の背骨を下から上へとなぞりながら脅す異様な切っ先に、全員が意識を向けた。

「しっ真選組……」

正体を知るやいなや真っ青に染まる顔の数ときたら、よくもそこまで大物面できるなと逆に感心させられる。
かぶき町に住まう底辺の人間を冷めた目で捕らえ、男は隠し持っていた武器を取り出した。
炸裂するバズーカ砲。

「ぐわあああ!!」

爆撃と同時に宙を舞うチンピラが店外に吹き飛んだ。
他の客も巻き込まれ、店内に残った数は三人。
気を失ったゆりと、調理場で唐揚げを揚げていた店長。

「おーおー、でけェ花火作ってくれるね。ただの雑魚が」

そして真選組一番隊隊長、沖田総悟。





To be continued.
20090308


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