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ボンボンちょこれぇと
帰る前からデートです
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一緒に帰ろうと星の教室に迎えに来たけれど、肝心の本人は済まなさそうに身を縮こませて頭を下げてこう言った。



「掃除当番なんですっごめんなさいっ!」






誰もいなくなった教室でせっせと箒を動かす星を邪魔にならない一番後ろの席に座り眺める。


待たせるなんて出来ない、先に帰ってほしいという星の言い分を俺が一緒に帰りたいんだという一言で丸め込み、現状に至る。


しっかし、なんつーか。



「てきぱきしてんなぁ…」



さっき箒を持ったと思ったら今は雑巾で窓まで拭いている。そこまでする必要があるのか俺にはわからないが、ちょこまかてきぱき動く星を見ているだけで楽しかった。


普段目にすることのない光景に新鮮さを味わっていれば、星が黒板を消し始める。けれど身長のせいで一番上までびっしり書かれた文字を消せない。


腕を限界まで伸ばし、つま先立ちまでしてぶるぶる震える星の不意打ちについ俺は笑ってしまう。幸い本人には聞こえなかったようだが、あれはやばい。



うわー…なんつー可愛いことをしてくれてんだよ。あ、飛んだ。やべえ…ぴょんぴょん効果音まで見えてきた。



俺は耐えられず星の後ろまで行き手を出す。星はきょとんと俺を振り返った。



「篠先輩?」



「黒板消し、貸せよ。俺がやるから」



「えっ…あ、はい」




残っていた文字を消していくが上の方だけだったためすぐ終わってしまう。黒板消しを置こうと下に視線をやれば見上げる瞳が二つ。



「どした?」



「はっ!…いえ!なんでもないですっ」




なんでもないと言うが少し頬が紅潮している。気になって黒板消しを置いた流れで両側に手をつく。後ろから覆い被さり星の逃げ道をなくせば今更慌て始める。



「言えよ。気になんだろ?」



「うっ!…ず、ずるいです篠先輩っ…!」



「わかってる。なあ、星。さっきなに考えてたんだ?」



耳に直接吹き込めば小さい身体をさらに小さくして星は震える。真っ赤な頬を手の甲で押さえつつ、少しずつ喋り出した。



「篠先輩が、大きいってわかってました、けど…その……改めて意識、しちゃって…抱きしめられた時のこと、思い出したというか…っうわあ!何言ってんだろっわ、忘れてくださ…!!」



そこまで聞いてからかう余裕なんて吹っ飛んでしまい後ろから力任せに抱きしめた。腕の中にすっぽり収まった星は固まったまま動かない。


俺は絞り出すような溜め息を吐き出す。
熱くなった頬を見られないよう星の肩口に額を乗せる。



「お前なぁ……俺のこと試してんだろ絶対」



「えっ?えっ?」




今すぐ押し倒したい衝動をなんとか堪える。最近ようやく普通に笑いかけてくれるようになった星を怯えさせたくはないし、やはりお互いが同じ気持ちになってからでないと意味がない。



好きになってもらってから、とかどんだけなんだ。今までなら考えられねぇよな、マジで。


と、感じるもののそれくらい星を好きになってしまった自分を無視は出来ない。
それに抱きしめられたことを思い出して頬を染める位には俺のことを意識してくれてる訳で。



うん、前向きに考えよう。それが一番だ。



自分なりに気持ちも考えも整理し、抱きしめていた身体をそっと離す。訳がわからないとすぐさま見上げてくる星に苦笑して頭を撫でる。




「懐いてくれんのは嬉しいけど、少しは警戒心も持てよ?」




「えと…わかりました…?」




言いたいことがあまり伝わっていないのは歴然としていたが、そんな星も可愛いなあと思ってしまう自分を感じ、今度は少し乱暴に星の頭を撫で回し続けた。









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