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ボンボンちょこれぇと
2
突然電話を切った篠先輩がグラウンドに現れ、有無を言わさず腕を掴まれた俺はそのままどこに向かうのかもわからず引きずられていく。


はじめて見る篠先輩の無言の威圧感に俺だけじゃなく周りで見ていた生徒も、果ては先生まで何も言えない。



不安を感じつつも、掴まれた所が熱くてまた体温が上昇した気がする。火照った頬をどうすることも出来ず、辺りを見回す。連れてこられた場所はグラウンドの隅、ロッカーとは反対側に位置している水飲み場と自販機が置かれている少し奥まった所。




人気のない場所に一体どんな用事があるのか、そう疑問に思った時だ。俺が何か言う前に大きな身体にすっぽり抱きしめられる。


…人間ってあれだよね。予想もしてないことが起こると真っ白になるっていうか。まさに俺、今、頭真っ白。



「…篠、先輩……?」




頭に顔を埋められ、背中に回る腕や逞しい胸元をリアルに感じて更に体温が上がる。


う…うわああぁぁ!俺、今、篠先輩に抱きしめられてる!?なんでっどうして!?




「あー……ごめん」



「へっ?」




あわあわパニックを起こしていた俺に篠先輩は掠れた声で謝る。どうして謝られるのかわからなくて、宙ぶらりんだった両手を背中に回す。



「ほんとは…星が俺のこと好きになんの待つつもりだったんだけど、無理みてぇ」



抱きしめる力が増して、頬に添えられた手で顔を上げられ目があう。俺を見つめる瞳の真剣さに固まっていれば、徐々に篠先輩の顔が近付いてくる。



「え…?」


なに?どうなってんの?
なんで、篠先輩にほっぺた撫でられて−、



「星…頼むから、逃げないでくれ」




「し、篠せ…!」




先輩と呼びかけた唇に息が触れた。



後はもう訳がわからない。篠先輩の格好いい顔がドアップになり、反射で目蓋をきつく閉じたらすぐ唇に柔らかいものが押し付けられた。


そっと唇を啄まれ、ぎゅっと篠先輩の背中に掴まる。それに気をよくしたのか先ほどよりも強く、そしてねっとり唇を重ねられ舌が押し込まれた。




「ふぁっ、ぅ…っ」




他人の舌に舐められる感触が全神経を過敏にさせていく。どこを舐められても吸われてもびくびく身体が跳ねて恥ずかしい。


けれど篠先輩は俺の反応を気にすることもなくキスを続ける。段々力が抜けてきて自分の足じゃ立っていられなくなり、大きな身体に縋りつく。



「んく、っはぁ…!」



座り込みそうになったため唇が離れるも、篠先輩ががっちりと俺を抱き留めてくれる。


「はっ……星、」



名前を呼ばれ目蓋を開く。視界いっぱいに広がる篠先輩の顔にどきん!心臓が一際大きく跳ねた。

さっきまでこの人とキスをしていたのかと思うと信じられなくて、俺はふにゃふにゃの頭でもう一度目蓋を閉じた。


すぐ側で息を飲む音が聞こえ、またしても唇に柔らかいものが重なる。今度は俺の酸素も奪いかねないくらい、激しいもので。




俺はただ必死に溺れないよう、置いて行かれないようキスに応え続けた。










それから俺はジャージ姿のまま篠先輩たちの溜まり場に連れて行かれ、未だ離してもらえてなかったりする。



「っんー…」



狭い部屋の中にぴちゃぴちゃという音が響く。卑猥な音に混じってどうしても漏れてしまう自分の声が甘い気がしていたたまれない。



隣同士で座ったソファー。
俺は篠先輩に半ば覆い被さられる形でキスを受けている。飽きることはないらしく、篠先輩は執拗に舌と唇で俺を貪る。


時折、指先が耳の裏や項、顎をくすぐる。その優しい感触が気持ちよくて、なぜこんなに長い時間キスをしているのかという疑問も霧散してしまう。



「ふぁ…っ、ぅ…」



「ん、…星」



「っ…ぅ、ぁ…んんっ」



息が苦しくて顔をずらせばすかさず篠先輩が追いかけてきて、互いの唾液で濡れた唇を重ねる。甘い疼きが身体を震わせるも、俺は子供みたくいやいや、緩く首を振る。



「ん…?」



それに気付いた篠先輩がキスしたまま問いかける。



「ぅんん…も、唇…腫れる…っ」



じんじん熱を持つ唇を離して欲しくて訴えるけれど篠先輩は嬉しそうに笑う。
赤くなった唇を親指でさすり、見たことがないいやらしい笑顔と声で俺を追い詰める。



「腫れたら舐めてやっから…」



「っ!…そ、ゆ…ことじゃ、」




どくん、心臓と腰が甘く痺れた。
そんな格好いい顔と声で囁くなんてずるい…!!ほだされそうになるじゃん!

篠先輩に舐めてもらいたい、って。



けれど、篠先輩は頭の中をぐるぐるさせていた俺に留めをさした。




「星……、好きだ」



「っ…!!!」



初めて聞く、篠先輩の「好き」は破壊力抜群だった。掠れた、でも艶のある低音が全身を駆け抜ける。



もうだめかも、俺。
死んじゃいそ…。




「…星」



「ぁ、っ…んん、」



名前を呼ばれ顔を上げると、またしても重なる唇。じん、熱い痺れを感じながら俺は篠先輩の「好き」をずっと反芻していた。




反芻するたび、甘く痺れてしまう理由を。



考えながら−−−…。
















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