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「なっ……!!」


 真っ赤に染まったシャルの目を見て、アレンの表情が強張った。


「こんなロープが無きゃ……!!」


 シャルがそう叫んだ瞬間、赤いオーラがシャルの全身を包み込んだ。まるで、紅蓮の炎に身を焼かれているみたいだ。いや、焼かれているというよりも、紅蓮の炎に身を纏っていると言った方が正確だろうか。

 そして、シャルが赤いオーラに包まれたその次の瞬間。
 シャルを拘束していた特殊なロープが、まるで蒸発するように、跡形もなく消えていったのであった。


「──ロープが!!」


 予想外の出来事に、アレンが息を呑んだ。
 突然の出来事にアレンが固まっている隙に、自分の身体を拘束するロープが無くなったシャルは、首根っこを掴んでいるアレンの手を振り払い、そして飛びかかった。


「食らえこの野郎っ!!」


 アレンの首元に腕を回し、ラリアットの状態でアレンを攫って、数メートル飛んでいった。

 そして、地面にアレンを力一杯叩きつけた。


 ────その瞬間、壮大な爆音と共に、アレンが叩き付けられた地面が盛大に破壊された。


「うわっ!!」

「っ!!」


 衝撃波が、エアリーとレイアスのもとまで飛んでいった。続いて、コンクリートの地面が瓦礫や砂煙となって辺りに一斉に飛び散り、エアリーとレイアスは思わず目を瞑った。

 しばらくして砂煙が晴れ、ようやく目が開けられる状態になり……エアリーは、シャルとアレンのいる方向を見て、目を丸くした。


 まるで爆心地のような巨大な凹みができていた。すぐ近くを流れている水路からギリギリで水が漏れていないのが奇跡だった。
 爆心地の真ん中に、アレンを地面に押し付けた状態のシャルと、真ん中で倒れているアレンの姿があった。


「しゃ、シャル……」


 エアリーが、僅かに頬を引き吊らせながら、背を向けているシャルに声を掛けた。

 シャルはエアリーの声にピクリと反応し、ゆらりとその場に立ち上がり、エアリーの方を振り返った。


「エアリー、今助けるからな!」


 そう言ったシャルの瞳は、いつもの空のような青色だった。エアリーは、思わずホッとした。

 シャルは爆心地の凹みから離れ、エアリーとレイアスのいる所まで歩いていった。そして、レイアスをキッと睨んだ。


「後はお前だけだぞ」

「…………」


 レイアスは、爆心地で倒れているアレンを一瞥した。
 アレンはピクリとも動かない。例えここでレイアスがシャルにボコボコにされようとも、助けられないに違いない。
 なら、選択肢は……。


「うん、どう考えても勝ち目はないや。降参降参」


 レイアスは、両手を挙げて降参のポーズを取りながら、へらっと言った。
 そんなレイアスを、シャルは意外に思った。レイアスの事だから、また何だかんだで無理矢理勧誘してくるかと思ったからだ。


「俺達の負けだ。100人倒された上にアレンまで倒されちゃうなんて想定外。何もしないから、そんなに睨まないでよ」

「………」


 何の惜しげもなく降参したレイアスを、シャルは複雑に思った。

 恥ずかしくないのだろうか。ここで倒れているのは全員、レイアスの為に戦っていた筈なのに、当の本人はいとも簡単に降参するとは。
 シャルは、アレンを含む倒れている男達に、同情の目を向けた。

 とはいえ、何もしてこないならそれに越したことはない。シャルは、先ほどアレンが投げたナイフを広い、エアリーを拘束しているロープを切断した。


「ありがとう、シャル。もうこんな所にいる必要はないわ、早く逃げましょう」

「そうだな。
 ……セリに手出しはさせないからな!!」


 シャルは、そう言ってキッとレイアスを一睨みした。


「あはは……威勢がいい奴は俺、嫌いじゃないよ。心配しなくても、セリくんを怪我させる事なんてできないよ。セリくんは俺の元にいないしさ」


 ───尤も、俺よりもレムの方がやることなすこと過激だけどね。まあ、再生の能力者だし、死ぬことはまずないだろうけど。

 そう思い、レイアスは遠くにいるセリを少しだけ哀れんだ。

 シャルは、レイアスの言った言葉に疑わしげな目を向けながらも、踵を返して地下水路の出口へと走って行った。エアリーも、シャルの後へ続いて走って行く。
 レイアスは、2人の姿が見えなくなるまで、2人の後ろ姿を目で追っていた。

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