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「……この間の話の続きをしようか、シャルくん」


 エアリーとアレンが死闘を繰り広げているのを余所に、レイアスが、シャルの髪の毛で三つ編みを作りながら言った。どうやら暇になるとじっとしていられない人間らしい。
 レイアスほど襟足が長いわけではないから三つ編みなんて作った所ですぐ解けて変な癖がつくだけだ、とシャルは思った。


「ねえシャルくん、俺と一緒に来る気はないかい?」

「……ないって言ってるだろ。何考えてるんだお前」

「使える奴は味方に着けておきたいだろ?君みたいな奴をこれ以上敵対させてても仕方ないし。あと顔が好きだし」


 レイアスが最後にチラッと混ぜた言葉が、何気に危なっかしい。
 シャルは、顔だったらレイアスの方がよっぽどいいじゃないかと思いながらレイアスの話を聞いていた。


「まあ顔が好きだとかっていうのは冗談だけどね。なに、悪いようにはしないさ。ただ、ちょっと協力してほしいだけなんだ」

「何の協力だよ」

「この星を生命の息吹溢れる星にする素敵なボランティアだよ」


 白々しい嘘を吐くな。こないだ下僕になれと言っただろ。シャルは、白けた目でレイアスを見た。
 どうせろくでもない扱いを受けるに決まっている。だったら、村で自由にのびのびと過ごした方がいい。


「……まあ、断るのは勝手だけどね。
 でも、セリくんがどういう立場にいるんだかわかってるよね?バカじゃあるまいし」

「!?」


 突然レイアスの口から飛び出したセリの名前に、シャルは思わず目を見開いた。


 ───まさかレイアスもレムデスのように、セリに危害を加えるつもりなのか!?


 シャルの脳裏に、病気で苦しんでいたセリの姿が思い浮かんだ。もう、セリに苦しい思いをさせたくない。


「セリをどうするつもりだ!!」

「それはシャルくんの選択次第だねぇ」

「お前……!」


 シャルの中で、レイアスに対する怒りが沸々と湧き上がってきた。体が、怒りで熱くなるのを感じた。
 自分をオモチャにする為だけにセリをどうこうしようとしているレイアスに、心底腹が立った。


「俺はお前の下僕にはならないし、セリも好き勝手させない!何でも思い通りになると思うなよ!」



 ───シャルが、レイアスに威勢良く啖呵を切った、その時だった。



「レイアスさん、勝ちましたよ」


 不意に、シャルの耳にアレンの声が聞こえてきた。
 アレンが、レイアスの方を振り向きながらロープを握っていた。アレンの後ろで、シャルと同じようにロープに吊されているエアリーがいた。


「シャル同様に頭の足りない女だったんで手こずらずに済みました」

「……くっ、卑怯な手を使って……!!」

「まんまと引っ掛かる方が悪いんです」


 エアリーの言葉を、アレンが冷たく一蹴する。捕らえられたエアリーを見て、シャルは目を見開いた。


「そんな……エアリー!」

「……ごめんなさい、シャル。助けに来たのに……情けないったらありゃしないわ」


 そう言いながらエアリーは、罰が悪そうに目を伏せた。

 ───どうしよう。俺のせいで、エアリーが捕まってしまった。

 シャルは、激しい自己嫌悪に苛まれた。

 エアリーは、そもそもシャルとは無関係の人間だ。わざわざシャルを助ける理由も義理もない。しかしそれでも、捕らえられてるシャルの噂を聞きつけて、自分の危険も省みずに助けに来たのだ。

 エアリーがいなければ、シャルは今頃ここにはいない。それなのに、エアリーは捕まりそうになっている。自分はエアリー迷惑をかけるだけで、エアリーの為に何もできないのか。

 シャルは、かつてないほどに自分に腹を立てた。


「うなだれないでください、鬱陶しいんで。戻りますよ、シャル・アーシェイド」


 アレンが、うなだれているシャルの首根っこを掴み、シャルの手首にきつくロープを締め付けたまま、吊しているロープを切断してシャルを連れて行こうとした。


 ───その時だった。



「俺に、触るな!!!」



 シャルが、空のように青い瞳を血のように真っ赤に染め、激昂した。


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あきゅろす。
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