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「誰かと思えば……君は、五星子のエアリーちゃんか。俺の原星石が反応してるよ」


 そう言うとレイアスは、懐から、青色の石を取り出した。


「綺麗な青でしょ。君の色だよ、エアリーちゃん」

「……貴方は幹部さんね。どうしてこんな所にいるのかしら」

「なんとなく。……っていうのは嘘だけどね。君達がここを通るだろうってのは容易に予測できていたんだよ」


 レイアスは、そう言って手を高らかに上げ、指を鳴らした。
 その瞬間、レイアスの背後から、女神の騎士団の服を纏った者達が大勢、姿を現した。


「なっ……!い、いつの間に!?」

「地下水路の出口は1つだけだ。だから、いつ君達が逃げ出してもいいように、準備をさせていたんだ。そしたら、中から爆発音がしたからね。
 ほらほら、俺にばかり気を取られてると……背後から思わぬ攻撃を食らうかもよ?」


 レイアスの言葉にシャルとエアリーはハッとして後ろを振り返る。そして、思わず息を呑んだ。
 シャル達の後方にも、大勢の女神の騎士団の制服の者達がいた。


「こっちは総勢100人。彼等を退けたら見逃してあげるよ」

「お、お前は戦わないのかよ!」

「戦闘は不得手なんだ。こういう事は血の気の多い奴らに任せるのさ」


 そう言ってニッと笑うと、レイアスは教団の男達の間に引っ込んでいった。


「ど、どうするんだエアリー……」

「大丈夫よ、シャル。私達には人質がいるのよ」


 そう言うとエアリーは、ロープで雁字搦めにしたアレンの首に腕を回した。


「動くんじゃないわよ、貴方達!さもないと、こいつの頭を吹き飛ばすわよ!」


 エアリーは右手で人差し指と中指を立てピストルのような形を作ると、アレンの頭に突きつけた。
 その様子を見たシャルが、顔を引きつらせながら言った。


「え、エアリー……それは流石にちょっと……」

「大丈夫よ、シャル。別に私だって本当に吹き飛ばす気はないわ。安全にここを出たら解放するわよ」


 シャルにしか聞こえないくらいの小声で、エアリーが耳打ちした。

 そしてエアリーは、にやっと笑いながら、教団の男達に向き直った。


「さあ貴方達、そこをどきなさい。この眼鏡くんの命は私が握っているのよ!」


 エアリーの威勢のいい声が、地下水路に響いた。

 ───すごいな、エアリーは。俺に出来ないことを平然とやってのけるなんて……

 シャルはエアリーに感心しつつ、アレンに少し同情した。
 まあ、何はともあれ、流石に奴等も観念してどくだろう。

 ……そう思ったシャルだったが、男達は、誰一人としてその場からどく気配がなかった。


「ちょっと、貴方達。道を開けてちょうだい。彼がどうなってもいいって言うのかしら」


 エアリーが、若干苛々した口調で繰り返した。
 だが、それでも男達は、道を開く素振りを見せない。それどころか、アレンを人質に取っているエアリーを見て、にやついてすらいる。

 そんな様子の相手を見て、シャルは怒りを覚えた。


「……まさかこいつら、仲間を見捨てても平気だっていうのか!?なんて奴等だ……!」


 凶暴な魔物に襲われる度に村人一同で助け合う事が当たり前だったシャルにとって、そんな男達の反応は、許せないものがあった。

 ……が、先程から一連のやり取りを見ており、さらにシャルとエアリーのやり取りを聞いていたアレンが、不快そうに顔をしかめて、口を開いた。


「さっきから聞いてれば、あんた達は……僕を舐めてるんですか?」


 ───その刹那。


 アレンの体に巻き付いていたロープが、突然、解けてバラバラと地面に落ちたのであった。


「なっ……!?」


 アレンに対しては完全に油断していたエアリーは、予想外の出来事に吃驚した。
 そばで見ていたシャルも、何が起きたのかわからず、ただ目を丸くした。

 アレンは自由になった手で、首に回されているエアリーの腕を掴み、そのままエアリーに背負い投げをかけた。


「───!!」


 エアリーの体が、宙を舞った。
 エアリーの体が壁に激突───する寸前にエアリーは空中で体を捻り、壁に足で着地した。


「……惜しい。全力で投げたのにな……」


 アレンが、残念そうな表情で言った。


「貴方……!まさか、“停止”の効果はとっくに切れて……?」

「今更気付いたんですか、鈍いなぁ」

「おい!ロ、ロープはどうやったんだ?」

「僕はロープを扱い慣れてますからね、縄抜けくらい熟知していますよ。
 さて、停止の効果を演じてる必要も無くなったし……」


 そう言うとアレンは、地面に落ちたロープを拾った。


「アレンは見た目はいかにも鈍臭そうな地味眼鏡だけどね、実はバリバリの戦闘派なんだよ。俺よりはずっと強いかな。レムといいアレンといい、見掛けに寄らない戦闘派がいて女神の騎士団は楽しいよ」


 離れた位置から、レイアスがにやにやと笑いながら言った。


「にゃろ……だったら、100人だろうが1000人だろうが、迎え撃つまでだ!」


 シャルも、負けじと武器を構えた。

 先程の武器庫から持ってきた聖剣を、麻袋から取り出したのだ。それを見たエアリーが、目を見開いた。


「……ちょっと、シャル!持ってくるなって言ったじゃないの!」

「どうせ追われる破目になるのは変わらないんだから、俺はあいつと直感を信じる!」

「この……バカ!!」


 声高に言ったシャルを、エアリーが呆れたように罵倒した。
 そんなシャルの様子を、レイアスは離れた位置から観察していた。


 ────あいつ……アレックスくんのことか。アレックスくんと、直感を、ね……


 レイアスは、ひっそりと、意味深長な笑みを浮かべたのだった。


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あきゅろす。
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