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4


 シャルとエアリーは、壁伝いにジャンプして地下水路の真上の部屋に上がった。2人とも、身体能力は相当高い。

 部屋の中に着地したシャルは、辺りをキョロキョロと見渡した。


「……ここは、一体……?」


 そこは、何やらたくさん物が置いてある部屋だった。
 窓もなく光もないので、薄暗い。地下水路の灯りだけが、ギリギリ中を照らしているくらいだ。

 そこは、武器庫だろうか。鉄製の剣や鉄製の盾、銃が所狭しと並んでいる。部屋の壁側には、ダンボール箱が山済みになっている。


「俺の木刀……はないか」

「……ここ、武器庫よ。ここに用があったの?」

「そう……なのかな?」

「何よ、はっきりしないわね」


 エアリーが、眉間に皺を寄せながら言った。わざわざ危険を冒してここに来ているのに目的もはっきりしないとあっては、不機嫌にもなるだろう。シャルは、エアリーに対して申し訳なく思いながら、辺りを見渡した。
 ふと、ある鉄の箱がシャルの目に入った。


「……? あれは……」


 シャルは、不思議に思いながらその鉄の箱に近付いた。
 何故その箱が気になったのかはわからない。ただ、なんとなく気になったのだ。
 箱に、何かが書かれている小さな紙が貼られている。難しい文字で、何が書かれているのかわからない。


「……魔符よ、これは」

「まふ?」

「この札に、この箱が開かないように魔法がかけてあるの。鍵みたいな物よ」

「そうなのか?」


 シャルは、試しに箱に手を掛けてみた。
 ……エアリーの言うとおり、箱は開かなかった。特に開かないようにどこかで押さえられてるようには見えないのにだ。


「……紙に書かれた魔法を解除しないと開かないわよ。でも、これはなかなか複雑な魔法が掛かっていて、私でも開けられないわね。諦めなさ……」

「じゃあこの紙を剥がせばいいんだな?」


 言うが早いか、シャルは鉄の箱に貼ってあった紙をべりっと剥がした。
 その光景を見ていたエアリーが、思わず目を見開いた。


「………え?」

「お、開いたぞ、箱。なんだ、剥がしてしまえばただの紙切れだな」

「い、今……貴方何をしたの?」

「え?変な文字が書いてあった紙を剥がしただけだぞ」


 ……あり得ない。

 信じられない物を見るような目でシャルを見るエアリーには気付かず、シャルは何事も無かったかのように箱を開けた。床に、魔法が書かれた紙がゴミのように捨てられている。


「……これは……」


 箱の中に入っていた物を見て、シャルは目を丸くした。
 そこに入っていたのは、錆び付いた鞘に収められた、古い剣だった。
 鞘に収められた刃は見えないが、振るっただけで折れてしまいそうなほど錆び付いた持ち手を見ただけで中も想像できる。
 初めて見た剣だったが、シャルはそれが何なのか直感でわかった。

 これは、シャルがアレックスに貰った剣だ。そして、女神の騎士団の者達が言うところの、“聖剣”だ。


「……そうか、この剣の事だったんだな……」


 ずっとシャルに語りかけていた声が、示していたもの。この剣の事を指し示していたのだ。
 シャルの直感が、そう告げていた。ならば、あの声の主は、ひょっとして……。

 シャルは、ゆっくりと聖剣に手を伸ばした。

 ───が、その手は、横から伸びてきたエアリーの手に阻止された。


「……それは駄目よ。貴方、何故ここに来る羽目になったのかを覚えていないの?」

「……でも、何故かこれを持って行かなきゃならない気がするんだ」

「駄目よ、置いて行くのよ」


 強い口調でそう言われて一瞬尻込むが、置いて行く事を渋るシャル。

 ……その時、武器庫の扉が外から開かれ、武器庫に光が入り込んできた。
 シャルとエアリーは、「しまった」と思い、一斉に扉の方を振り返った。


「……なんかすごい音がしたと思って来てみたら……
 なんで動き回ってるんですか?シャル・アーシェイド」


 そう言って、扉から入ってきた人物──アレン──は、眼鏡越しにシャルを睨みつけた。


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あきゅろす。
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