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 シャルの家には、シャル、マルク、アレックス、セリ、ハウェル、村のドクターがいた。みんなそれぞれが、ベッド脇の椅子に座っていた。マルクがセリの枕元に立って、セリの額に置いたタオルを定期的に取り替えている。


「……これは……」


 ドクターが、信じられない、と言わんばかりに顔を歪める。それを見たシャルは、不安げにドクターに尋ねた。


「……どうしたんだ?一体、何だっていうんだ?」

「この首筋の青い痣を見てください。この痣は……と、とても信じられない事ですが……ウール症候群に、なった証拠です」


 深刻な表情で声を震わせ、ドクターは告げた。ドクターの言葉に突如、その場にいた人物は、一斉に立ち上がった。


「ウール症候群だって!!?」

「何故だ……!!」

「まさか、そんな……!!何故今更……」

「……う、うーる症候群だって!?大変だ!!」


 アレックスとハウェルは、深刻な顔つきをしていた。マルクは泣き崩れた。シャルも、慌てたような表情だ。


「ウール症候群とは、120年ほど前にラインベルト王国のウールを発祥地に、ラインベルト西部から、当時隣国だったラヴ王国東部にかけて大流行した奇病です。ではどんな病気かご存知ですか、シャルさん?」

「…すみません、わかんないです」


 シャルは、罰が悪そうに言った。どうやらシャルはウール症候群自体は知らないものの、周りが大層驚いていたので大変な病気なんだろうと悟り、一緒に驚いていただけらしい。


「一般常識の範囲だと思うのだがな」


 ハウェルは溜め息をついた。


「ウール症候群は、主に動物の体に寄生します。ですが、動物は感染しないウイルスなのです。ですが…人間だけは感染するのです。
 感染すると1時間程で発症します。まず最初に、40℃程の高熱を出します。
 …そして、発症して5日程で、体が完全に硬直し、全身麻痺のような状態に陥ります。普通は死に至るような病気ではありませんが……最悪の場合、後遺症で手足が不自由になる場合があります」

「何だって!?」


 ドクターの話を聞いたシャルは、ガタッとと勢いよく椅子から立ち上がった。


「そんな……!」

「……まあ、それが最悪の事態で……確率としては三割、といった所です。ところでシャルさん。セリ君の首筋に噛まれたような跡があるんですが」


 ドクターがセリの首筋を見せた。セリが「うっ…」と呻いた。
 先程見せられた青い痣の近くに、獰猛な獣に噛まれたような跡があった。まるで、ライオンにでも噛まれたような…

 ……ライオン?


「…心当たりがあるのですか、シャルさん?」


 怪訝な顔をしたシャルを気にして、ドクターがシャルに尋ねた。4人の視線がシャルに集中した。

 ウール症候群は動物には感染しないとドクターは言った。つまり、予め動物に寄生させておいて対象の人に感染させるのもありなのではないかと、シャルは考えた。
 シャルの頭に真っ先に浮かんだのは、あのキメラの突撃だった。最初は、あのキメラの突撃は理解できなかった。しかし、こうした狙いがあったとしたら納得がいく。


「そういえば、まだお前に先程の話を聞いていなかったな。何があったのか、話してくれるな?」


 ハウェルの言葉にシャルは頷き、先程あった出来事を3人に話した。

 キメラの突撃や、レムデスという男がセリを連れて行くつもりだとか、セリを金で買い援交するつもりだとか……
 所々間違いはあったものの、シャルは言い遂げた。


「援交!?」

「レムデスがそうやって言ったんだ!!金を払って援交するって!!……ところで、援交ってなんだ?」

「何なんだよそいつは!!とんだ変態野郎じゃねーか……!!」


 散々な言われ様のレムだった。


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