「か、顔ばかりはどうにもなりませんよ!?この顔は生まれつき何です!整形でもしない限り、これ以上良くは…っ」
「なるんじゃない」
「・・・へ?」
そ、そう何ですか?それは一体どうすれば…?
「何時もみたいに笑ってれば良いよ、君は…」
一瞬だけ…。ほんの一瞬だけ、雲雀さんの表情が柔らかくなった。自惚れでなければ、それは私に『笑顔で送り出して欲しい』…と言う事?その時、隣に居た沢田さんに頬を撫でられる。彼の方を振り返ると柔らかな日差しの中、優しく微笑む沢田さんが立っていて。
「名前は心配する必要なんてないよ。俺達は強いから…。誰にもヤられたりしない。約束する。……だから…」
視線を合わせるように屈み込まれる。彼の手に包み込まれた頬が…熱い。
「何時もの笑顔で送り出してくれ。そして、その変わらぬ笑顔のまま…俺達を出迎えて……ね?」
私は大きく頷いた。
それが彼らの望み。だから私は二人の望む笑顔を作る。少しぎこちないかも知れないけれど、今はこれで許して下さい。二人が帰る時にはもっと自然に笑えていると思うから。だから今はこれで。
◇ ◇ ◇
それから暫くして、二人は数人の部下と共に車へと乗り込んだ。相手マフィアの本拠地へ向かう為に…。私はその姿を見送る。皆さんの姿が見えなくなるまで、ずっと。
ずっと―……。
≪綱吉side≫
「素直に言えばいいじゃないですか。名前の笑った顔が好きだって」
車に乗り込んだと同時に、向かいに腰を降ろした雲雀に綱吉がそう囁く。
当然、雲雀には訝しげな顔をされる訳で…。
「…誰もそこまで言ってないよ……沢田綱吉」
そして予想通りの答えが返って来る。
「そうですか?俺は好きですけどね名前の笑顔」
「…それも聞いてない」
先程よりも更に機嫌の悪くなった雲雀に綱吉は小さく苦笑を浮かべた。
窓の外に視線をやると、ガラス越しに名前の心配そうな顔が見える。この顔を見るのは何時も辛い。だから言わなければと思っていたのに…。
「………何?」
「いえ、別に」
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