獄寺さんに「全員生きてるから心配すんな…」と言われたけれど、やっぱり気になっていたから、こうして元気な姿を見れて―…、嬉しい…。
でも、傷が酷いのだろう。身体中のあちこちに包帯が巻かれている。
「おいアホ牛。お前動いて平気なのかよ…」
「山本氏達に比べればこんなの掠り傷ですよ!…それより名前さんの声が出なくなったって本当なんですかっ」
掠り傷と言う割には涙目になっているランボくん。成る程。痛いのをが・ま・ん…してまで走って来てくれたんだね。
――心配してくれてありがとう。私は唇を動かしてそう伝えた。
そんな私を見て「やっぱり本当だったんですね」と表情を曇らせるランボくん。獄寺さんもふっと視線を逸らした。声の出せなくなった私よりお二人の方が深刻そうだ。
――私の事本当に心配してくれてるんだな。嬉しさの余り笑みが零れた。
「そうやって笑ってられるなら大丈夫だな」
突然、医務室に入って来たのはシャマル先生だ。その手には大量のカルテが握られている。
「検査結果が出たぞ。何処にも異常なしだ」
「なっ、じゃあ何で声が出ねぇんだよ!!」
「落ち着け隼人」
今にも掴み掛かりそうな獄寺さんを落ち着かせてから、シャマル先生はカルテに目を通す。
「異常がねーつったら、ねーんだよ。…恐らく精神的ショックから来る一時的なもんだろうな」
「一時的…。そ、それじゃあ直ぐに治るって事ですよねっ!??」
良かったと安堵の溜息を零すランボくんにシャマル先生は小さく首を振った。
「直ぐ、かどうかは分からねーぞ。明日には治ってるかも知れねーし、一年経っても治ってねーかも知れねー。言っただろうが?精神的ショックから来るもんだって」
シャマル先生の言葉が胸に深く突き刺さる。
――それって治るかどうかも分からないって事?私は目の前が真っ白になった。カタカタカタ。両手が微かに震える。
このままずっと喋れなかったら?このままずっと…歌えなかったら。
――どうしよう、どうしよう、どうしようっっ
「………だったら…」
静まり返った室内に押し殺したような声が響いた。それと同時に私の両手が温もりに包まれる。
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