「至近距離でブッ放せば勝てるとでも思ってんだろ?……本気になれば、まとも食らっても、お前の炎など屁でもないが、まんまと策略にハマるのは面白くねぇ」
ニヤリと不快な笑みを零した直後、またしてもザクロが視界から消えた。
奴が現れたのは―…、
「あっけなくクタバレ」
獄寺さんの真後ろ。
背中を痛めた今の獄寺さんに取って背後は鬼門。
必死に後ろを振り向こうとするが間に合わない!
「獄寺さあああん!!!」
私の悲痛な叫び声が木霊し、森中に響き渡った。
その瞬間、獄寺さんの武器が眩(まばゆ)く輝き、激しく炎が噴射を始める。
直後、彼の身体がグルリと転換された。
サポートしたのは獄寺さんの相棒。嵐猫の瓜だ。
「この距離なら!」
獄寺さんは目一杯引いた弦を敵に向けて放った。
ドォォォン!!
凄まじい爆発と同時に周りの木々へと炎が引火。黒い煙が立ち込め、辺りは…焼け野原となった。
咄嗟に発動させた、守りの歌のシールドのおかげで、ラルさんとγさんは護りきる事が出来た。
(獄寺さんは!?)
私は慌てて周囲を窺う。煙の向こうに人影が二つ。獄寺さんとザクロだ。
獄寺さんは残りの力を振り絞り、最後の一撃を放とうとしていた。だが、
ドオオオン!
再び響いた爆発に私は目を見張る。爆煙が辺りを覆って視界が見えない。
「ま〜ったく、ザクロなっさけな〜〜い。迷子になったついでに助けちゃったわ」
上空から響いた声に私は顔を上げた。
そこに居たのは、雨の炎を纏(まと)った真6弔花の1人、ブルーベル。
「くそっ、てめーなんかに助けられるとは俺も焼きが回ったぜ!!」
「強がり言ってる割には良い格好じゃん♪」
先程の爆発で片腕を失ったザクロを、ブルーベルは楽しそうに見下ろす。
「ば、バーロー!!こんなのちょっとすりゃ――」
「デイジー程じゃないけど直ぐに再生できるって言うんでしょう?それまで待てって言うんでしょう?でしょう♪そんなの待ってられないよ〜だ」
無邪気な笑顔で匣を取り出し、ブルーベルはそれを開匣。躊躇(ためら)う事なく地上に攻撃する。
ドンドンドーン!!!
幾重にも繰り返される攻撃の嵐に、辺りは再び砂煙へと飲まれていった。
「さ〜て。目一杯、止めさ〜そぉっと♪」
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