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01.舞い降りた 歌姫 ****

≪side 綱吉≫
約束の時間まであと少しだというのに、面倒な相手に絡まれたものだ。
この人数なら俺一人でも支障はなかったが、問題は途中から乱入して来た彼女をどうするかだ。

「…女か」

敵の一人が彼女に向かって銃を構えた。
その指には微弱ながら死ぬ気の炎を纏(まと)わせたリングが輝いている。
流石にマフィアの抗争に一般人を巻き込む訳には行かない。
俺は瞬時に彼女の元へ走り寄ると、その腕を掴んで自分の側に引き寄せる。
恐怖の為に固く閉じられていた瞳がゆっくりと開かれ、綱吉を見た。
どこからともなく風が吹いて、彼女の長い髪をなびかせる。

「……っ…」

瞬間、雷に打たれたような衝撃が全身を駆け巡った。

「その女を助けようとしたって無駄だぞ、ボンゴレ10代目。
お前は今ここで、その女と共に死ぬ運命なんだからな」

男の一人が何か言っていたけど、今の俺には腕の中で震える彼女の事しか頭になくて。

「…大丈夫。……君は俺が、守ってみせる…」

気付いた時にはそう口にしてた。
驚いたように見開かれる瞳。

そんな顔をしないで欲しい。
誰よりも俺自身が一番驚いているんだから。

でも俺は信じるよ。
彼女を失ってはいけないと叫ぶ――。

“ブラッド・オブ・ボンゴレ(超直感)”を。



──チャキ

敵の銃口が一斉にこちらへ向けられる。
俺は咄嗟に拳を握り締めた。

「っ!」

しかし、腕の中で震えていた彼女が突然自ら身体を離したのだ。
俺は彼女を引き寄せようともう一度腕を伸ばす。
後一歩で手が届くという瞬間、彼女の身体が白い光に包まれた。
それと同時に綺麗な歌声が辺りに響き渡る。

(──…この歌、前に何処かで聞いた事がある……)

何処で聞いたのか必死に記憶を手繰り寄せようとするのに、彼女の歌声がそれを阻んで邪魔をする。
思い出したい、でも彼女の歌をもっと聴いていたい。
そんなジレンマに陥りながら俺は暫しの間、敵の事も忘れてその歌声に耳を傾けた。
温かくて、懐かしいと感じる、彼女の歌声に──。



それからどの位の時間が経過しただろうか。
急に音が止みハッと我に返ると、彼女の身体からスウ…と力が抜けて行くのが目に入った。
俺は咄嗟に彼女の身体を支える。
どうやら気を失っているだけのようだ。
ホッと安堵したのも束の間、何気なく顔を上げて俺は絶句する。

「……何、だよ、これ…」

何故なら先程までこちらに拳銃を向けていた男達がその場に倒れていたからだ。
よく見ると、彼らのリングから死ぬ気の炎が消えている。
一体何が起きたんだ?
俺は腕の中で眠る彼女を抱き締めながら、目の前の光景を呆然と見詰めるのだった。

「……君は一体、何者なんだ?」


舞い降りた 歌姫
(これが俺と君の初めての出会いだった)


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