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131.決戦前夜


「沢田さん、名前様。――森へ行きましょう」




ユニちゃんの助言により私達が訪れたのは、初めて10年前の沢田さんと出会った、あの森だった。
辺りはすっかり日も落ち、ユラユラと揺れるオレンジの炎なしでは、視界もままならない。
その薄明かりに照らされる仲間を見ると、立て続けの戦闘によって疲労困憊の色が見受けられる。
皆――、既に限界を越えているのだ。おまけに、



「しかし何てガキの多さだ。どこを見てもガキガキガキ。こんな奴等にミルフィオーレが振り回されるとはな…。それにまたアンタに会えるとは嬉しいね。元メローネ基地の裏切り隊長さんよ!」

「…っ、君達だってミルフィオーレを裏切ってるじゃないか!僕だって君達のような野蛮人と、また一緒になるとは思ってもみなかったよ!!」

「ンだてめー!アニキに喧嘩売ってんのかっっ」



友好的ではなかった者達が集っている為、険悪な空気が辺りに漂う。



「止めて野猿」



しかし、その空気を一瞬にして消し去ったのは、飲み水を汲みに行っていた、彼らの姫、ユニだ。
ユニちゃんは厳しい顔付きで野猿さんを見るや「皆さんと仲良くして…」と、たった一言で彼を大人しくさせてしまった。
そして入江さんへ非礼を詫びると、ユニちゃんは私の傍へとやって来る。



「名前様、ラルさんのお水をお持ちしました」

「有難う。でもお水なら私が汲みに行ったのに」

「いいえ。私が行きたかったから良いんです」



そう言ったユニちゃんに私はもう一度お礼を述べ、起き上がろうとするラルさんの身体を支えた。
ラルさんはユニちゃんからコップを受け取り、冷たい水を一気に飲み干す。そして再び横になり、ふぅと深い息を吐いた。



「ラルさん体調は?」

「だいぶ楽になった」



非7を放射していたメローネ基地が消滅したお陰で、顔色も幾分か良くなったように感じる。
その事に安堵し、ホッと肩を撫でおろした時、前方から温かな視線を感じて、私は顔を上げた。
視線の先にいたのは、慈愛に満ちた瞳で私とユニちゃんを交互に見つめる、ラル・ミルチさんだ。



「しかしお前達はよく似ているな。お前達の祖母、千歳とルーチェに…」


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