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129.D・スペードの魔レンズ ***


(このままでは名前が危険だ。――何処だ。奴は何処にいった!)



焦る気持ちを押さえつつ、精神を集中させるべく瞳を閉じる綱吉。だが、



「無駄です。一度トリカブトの羽根の模様を見た者は、目を閉じようと、幻覚を破る事は出来ない。超直感ですら彼を見つける事は出来ませんよ」



桔梗は全てを見越していたのだ。見越した上で、更に綱吉の不安を仰ぐ。



(ハハン。後はトリカブトから歌姫を確保したとの連絡を待つだけです)




◇ ◇ ◇


上空で綱吉と桔梗が対峙していた頃。名前は何処から来るとも分からないトリカブトの恐怖に、その身を強ばらせていた。

全ての五感を狂わされようと、己の身に迫る危険は自ずと察知出来るもの。背筋を這い上がる数多の恐怖に、名前がぎゅうっと瞳を閉じようとした、次の瞬間だった。


――ガッ!!


直ぐ傍で、何かを殴りつけたような鈍い音が響き、次いで名前の耳に聞こえて来たのは「ぐうっ」と言う、誰かの呻き声。

恐る恐る瞳を開け、音の出所に視線を向ければ、そこには三叉槍の柄の部分で、顔面を殴りつけられたトリカブトの姿が!

三叉槍の使い手など、名前の知る限りでは二人しか存在しない。一人は、霧の守護者にして、強力な幻術使いの六道骸。そしてもう一人は――、



「…名前に……、名前に触らないで…。この人は――…骸様のモノ!」



友人、クローム髑髏だ。

名前は驚きと混乱の入り交じった瞳で、クロームの姿を眺めていた。

その内、クロームがパッと上空を見上げ、綱吉に向かってこう叫ぶ。



「ボスっ、そっちに行った!!大空の子の右側!」



その言葉に従い、綱吉がユニの右側の空間に肘鉄を食らわせると、そこにはやはりトリカブトが!

綱吉に殴られ、直ぐに姿を消すトリカブト。だがクロームはまたも叫ぶ。



「下!ずっと下!!」



――ドガッ!



「左!!今度は左!」



次々とトリカブトの位置を言い当てるクロームに、味方だけではなく、敵までもが驚愕する。



「何故、敵の位置が…」

「簡単だぞ。クロームのボンゴレ匣だ。霧フクロウが形態変化したな」



リボーンに諭され、名前は彼女の目元に注目。
確かにそこには『山本の長刀』や『雲雀の手錠』同様、全く覚えのない兵器の姿が確認できた。



「ではあれが彼女の?」

「嗚呼。あれが初代霧の守護者が使っていた武器と同じボンゴレ匣。実体の掴めぬ、霧の幻影と謳(うた)われた――」



D・スペードの魔レンズ


(名前は絶対渡さない)


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