「ガ…、γ」
信じられないものでも見るように、ユニの瞳は大きく見開かれていた。
「姫様!!」
「お守りするぜ!」
しかも、現れたのはγだけではない。ユニの前に佇む二人の人物。それは紛れもなく、ブラックスペルの野猿と太猿の両名。彼らの姿を目にした瞬間、桔梗とブルーベルは微かに眉をひそめた。
「彼等はメローネ基地の転送時(ワープ)に死んだのではなかったのか!」
「プー!何であんな雑魚が邪魔すんのよ!!!」
苛立ちを隠そうともしないブルーベルが、トリカブトを怒鳴り散らして。
「何やってんの!!ユニを取り返すのよ!」
「γの技は全て知っている筈。一人で出来ますね」
桔梗の問い掛けにコクリと頷くと、ユニとの距離を縮めるべく、トリカブトは一気に加速。
「来てみやがれ!心から命を懸けられる戦いを待ってたんだ!!!」
「最高だぜアニキ!オレは今、ジッリョネロファミリーの野猿だ!!!」
ユニの前に立ちはだかっていた野猿と太猿が黒鎌を構え、トリカブトが目前に迫った瞬間、同時にソレを振り下ろした。
――が、その攻撃は掠る事なくトリカブトに回避され、しかも、二人の間を通り抜けた直後、野猿と太猿に異変が起きる。
「がはっ」
「うわ!!」
突如、二人の肩や背中から大量の血液が噴き出したのだ。空中でバランスを保てなくなった両名は、一気に地面へ急降下。
「野猿!!太猿!!」
「ちいっ」
迫り来る化け物に、γが黒狐(ネレ・ヴォールピ)を開匣するが、チェーンソーを手にしたトリカブトに効果がある筈もなく、野猿と太猿同様に、一撃で弾かれてしまった。
更にユニとの距離を縮めるトリカブト。γは片腕にユニを抱き抱えると、右手に填(は)めた雷のリングでシールドを展開。
「そのランクのリングでは役に立ちませんよ」
その姿をあざ笑うように桔梗が囁く。そんな事は言われなくても分かっていた。奴らに奪われたマーレリングに比べれば、出力が劣る事なんて。
だからと言って、諦める訳にはいかない。大切な姫を守る為には――!
「おおおお!!!」
γの心に共鳴するように、炎出力が増して行く。
無駄な足掻きを。桔梗が、そう思った時だった。
――ガッ!!!
鈍い音が響いたと同時に、トリカブトが更に上空へと弾き飛ばされる。
「どこを見ている」
低く呟くようなその声に、全員がハッとした。
そう。トリカブトを殴り飛ばした人物。それは、
「お前達の相手は、此処にいるぜ」
グローブに眩いばかりの大空の炎を灯した、ボンゴレ]世。沢田綱吉。
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