「…やっぱり、どうしてもアジトに戻るんだね」
出入り口前に佇む山本武の姿を、眉を顰(ひそ)めながら綱吉は眺める。
「嗚呼。わりーけど止めても駄目だぜ。スクアーロの事だからピンピンしてると思うが、一応な」
口ではそう言いつつも、一人アジトに残ったスクアーロの事を、山本が酷く心配しているのは、痛い程良く分かった。
「そうだね…ゴメン!オレ達は行けないけど…」
だから笑顔で送り出してやろうとしたのだが?
「心配ないわ。私達もついているし」
「私がアジトの秘密の入口まで案内しますから」
「ウちも」
何と、ビアンキ・ジャンニーニ・スパナまでもが、アジトへの帰還に名乗りを上げたではないか!
「驚いたな。ジャンニーニは恐がるかと思った」
正直にフゥ太がそう漏らすと、ジャンニーニは、クワッと瞳を見開き、けたたましく声を荒げる。
「ボンゴレアジトは私の血と汗の結晶です!状態が気になって、いてもたってもいられません!!」
そう言う理由ならジャンニーニが付いて行くのも納得が行く。スパナもモスカに使える部品が残ってないか見て来たいと言うし、疑問はなかった。
「――で…、なんでアンタが行く必要あんだよ」
謎なのは――ビアンキだった。複雑そうな顔でそう訊ねる獄寺に対し、ビアンキは瞳を輝かせる。
「まあ隼人!姉の心配をしてくれてるの?」
「ちっ、ちげーよ!!」
「……ちょっと忘れ物をとりに行くの。それに、怪我の手当できる人間も必要でしょ?」
「へ。勝手にしろ!」
山本は引き戸を少しだけ開け、外の様子を窺う。
「殺気はない大丈夫だ」
そして、中にいる仲間を振り返り笑顔を向ける。
「じゃあ行って来るぜ!ユニを頼む。寝てるランボにも宜しくな♪」
「うん」
「あの…皆さん…」
何か言おうと、ユニが前へ歩み出た。しかし、全てを悟ったビアンキが、ユニの頬に両手を伸ばし、優しく包み込む。
「『ありがとう』は要らないわよ。私達は自分の意志で行くんだから」
そして、プニプニプニと数回感触を楽しんだ後、ユニの背後にいた、クローム達に彼女を託した。
そんなビアンキに、ユニは笑顔で感謝を述べる。
有難うは要らない。そう言われたばかりなのに。
でも、ユニがそれに気付いた時には既に遅くて。
彼女が「ぁ」と小さく声を洩らすと同時に「また言った」と室内には明るい笑い声が響き渡った。
「ランボさんも一緒に遊びに行くもんね!」
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