――俺達の常識を遥かに越えてやがる。私はぎゅっと両手を握り締めた。
「修羅開匣は能力の掛け算なんだよ」
デイジーは言う。
「匣アニマルの持つ特殊能力と、人間の能力が掛け合わされて、あらゆる生命体のリミッターを越えた能力を生み出す事が出来るんだよ。だから」
“こんな事も出来る”。
デイジーがそう口にした瞬間、雲雀さんの手錠に絡まったままのちぎれた腕から、デイジーの身体が再生し始めたのだ!
しかも雲雀さんの身体を押さえつけ、その首を締め上げようとしていて。
「雲雀さん!!」
私が声を上げると同時に、雲雀さんは、右手に持ったトンファーで、デイジーの分身をなぎ払う。
デイジーは尚も続けた。
「残念だけど、君のボンゴレ匣は僕チンと相性最悪さ。もう諦めて名前様を渡しちゃいなよ」
「……いらないな」
カシャン。刹那、投げ捨てられるトンファー。
「その程度なら武器(トンファー)はいらない」
そして、手にした手錠をクルクルと回し出す雲雀さん。けれど可笑しい。いつの間にか、手錠の数が2つに増えている。
「…校舎を壊した罪と、並中のモノを奪おうとした罰で…君を逮捕する」
いや違う。2つでもない。あれは――4つ!?
「…抵抗は認めないよ」
「ふっ、面白い手品だね。でも手錠を幾つ増やした所で――同じだよ!」
瞬間、デイジーが再び雲雀さんに襲いかかった。
再度繰り返される凄まじい攻防。しかも先程よりもスピードが増している。私では追いきれない。
――その時。
ガシャン、ガシャン。
雲雀さんの手錠が又してもデイジーを捕らえた。
「ふふ、無駄だよ。手錠を幾つ填(は)めようが、同じ事の繰り返しだ」
「…僕も同感さ」
――“10や20”ならね。
刹那、ボンゴレリングが眩い光りを放ち出し、それと同時に、デイジーの手首に填(は)めた手錠が物凄い勢いで増殖して。
「ぼぼぼぼ!!??」
気付いた時、デイジーの全身が手錠でできた拘束具に覆われていたのだ。
デイジーが自切するスピードを上回る雲属性の増殖!それにしても、こんな形態になる何て…。
「……君…死にたがってたみたいだけど、そんな甘えは許さないよ…」
「ぇ?」
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