「覚悟は良いかい?」
雲雀さんが手にした手錠を翳(かざ)した瞬間、雲の炎を帯びた刺が、手錠の周囲から飛び出した。
対するデイジーは、校舎の凹みから抜け出すと、その武器を凝視する。
「(手錠……手錠が雲の守護者のボンゴレ匣か。確かに炎を帯びた刺に攻撃能力はあるだろうけど、所詮は人を捕まえるのに使う道具だ。白蘭様からはまだボンゴレ匣の情報を貰ってないけど…手錠って言うのはどう考えても…僕チン向けだ)」
そして、不適な笑みを浮かべた直後、二人は同時に地面を蹴った。
ガガッ…ビュッ…。
目にも止まらぬ速さで怒濤の攻防を繰り広げる両名。その間、何度か雲雀さんの手錠に生える刺がデイジーの腕を刺傷したが、晴の活性で瞬く間に完治し、大したダメージを与える事が出来ない。
それ所か、デイジーの振り上げた拳が雲雀さんの顔面へと迫って来て。
ビュンッ
――だが、雲雀さんはそれを紙一重で交わすと、
「もう逃がさないよ」
ガシャ。何と、敵を捕らえてしまったではないか。手錠をかけられ、身動きが取れないデイジー。
しかし敵は慌てた様子を見せる事なく、更に不適な笑みを浮かべると、
ブチッ
「デイジーの手首が!?」
手錠をかけられた己の手首を切り離したのだ。
しかも切り離した手首が、ほんの一瞬で再生し、驚きの為、僅かに生まれた雲雀さんの隙をついて、デイジーが彼を攻撃。
バキッ
相手の攻撃をまともに受けた雲雀さんは、衝撃で後方へと弾き飛ばされ、校舎の壁に激突する。
「雲雀さあああん!!」
「な、何だってんだ今のは!?人形の腕でも仕込んでやがったのか!!??」
「いや、そうじゃねぇな。あれはおそらく“トカゲ”の尻尾と同じだ」
ディーノさんは語る。
「トカゲは自ら切った尾を再生できると言う。デイジーもそれと同じだ」
「けどよボス、人間の手を、トカゲの尻尾と同じだってぇのは――っ」
「奴のリングの属性を考えれば不可能じゃない」
そう。デイジーの炎属性は…晴。晴は瞬時に細胞を復元させる高速治癒。それは分かっているけれど、あの速さは異常だ。
「ですが、幾ら晴の活性が働いているとは言え、再生が速すぎます!!」
「それこそがマーレリングの……いや、真6弔花の恐ろしさだな」
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