本物の攻撃と言う証拠。
『奥義』と言うだけの事はあり、その技には一切の隙がなく、回避するのは不可能だと思われた。
しかし、又してもデイジーは、私達の予想を裏切ったのだ。それも、信じられないような方法で。
「上下右右下前左右下右上下左左右下左下……」
何と、彼は迫り来る全ての攻撃を紙一重で交わしていたのだ。それは反射神経のレベルではない。
まるで、既にディーノさんの攻撃を見切っているかのような回避の仕方。
『――やっぱり今の、知ってるよ』
不意に蘇(よみがえ)る記憶。まさか、本当に見抜かれていたの!?でも、そんな事、出来る訳が…。
『名前チャン』
ハッとした。一人だけ思い当たる人物がいるではないか。不可能を可能に出来る“あの男が”!
全ての元凶――白蘭。彼が他のパラレルワールドで、既にディーノさんの攻略法を取得し、それをデイジーに教えているとすれば?今の状況も、そしてスクアーロさんの事も、全て納得が行く。
「ディーノさん!!!!」
ならば、このまま戦うのは危険だ。咄嗟に声を上げる私。けれど、この時には全てが手遅れで。
ブシャッ
ディーノさんのふところに飛び込んだデイジーの腕が、彼の脇腹を貫く。
「ぐっ」
「おいボス!!」
「ディーノさん!」
両脇の二人が何かを叫んでいたけれど、私は声を出す事も出来なかった。
「さっさと名前様を渡せば良かったんだ。そうすれば、痛い思いもしなくて済んだのに…」
「ぐあ!!」
「もっと痛くしないと、ユニ様の居場所、吐かないよね?彼女の居場所も吐いて貰わなきゃ…」
膝を折るディーノさんに、更なる傷を負わせようとするデイジー。止めて、もう傷つけないで!!
「止めてええええ!!」
私が叫んだのと、バキッ…と鈍い音が響いたのは、ほぼ同時の出来事。
ドゴオッ
続いて何かが校舎に激突し、ガラガラと壁が崩れ落ちる。見ると、そこには、外壁にのめり込んだ、デイジーの姿が!!
「ねえ君達。並中で暴れるの、止めてくれる?」
驚き瞳を見開く私の視界に、ヒラヒラと風に靡く学生服が目に入った。それは紛れもなく、トンファーを構え、颯爽と佇む、雲雀恭弥さんのモノ。
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