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12.決意表明***

そんな私を安心させるよう、沢田さんは優しく微笑みかけてくれて。
けれどそれはほんの一瞬の事で、彼は直ぐに正面へと向き直る。
その横顔が何時もに増して神妙な面持ちに見えて、トクリと心臓が跳ねた。

「ここに集まった面子には話したと思うけど、うち(ボンゴレ)が保護している名字名前さん」

沢田さんから突然紹介を受けた私は、慌てて頭を下げる。
相変わらず突き刺さるような視線が落ち着かない。
それに今日は先日の話の続きを聞かせてくれる筈が、何故このような大事になっているのか。
こうして改まって関係者に紹介されるのもディーノさんを除けば初めてだった。
沢田さんの事だから、何か理由があっての事だろうけど、こんな公の場を設けるほどの理由とは一体?

「保護した経緯はあらかた説明したし、その“理由“も、今日ここに居るみんなは、解ってると思う」

ああ、そうかと、私は密かに納得する。
やはり前に沢田さんが私の事を知っていたという話は本当だったのだ。
あの時は親同士が連絡先を知っていたのだから、私の事を知っていても不思議はないとそう考えた。

けれど今の話を聞くに、私の事を知っていたのは沢田さんだけではない。
獄寺さんや山本さん、ここに集まっている全員が私の事を知っている。
そしてそれは、もう一つの仮説を浮かび上がらせる事になる。
私がここ(イタリア)に留まらざるを得なかった理由だ。
単なる警護などではなく、何か他に意味があって、彼らに引き止められているのではないか、と。

「“歌姫“」

沢田さんの口から漏れ出た単語に、室内が一瞬ピリついたのが空気で解った。
言葉の意味は私には解らなかったけれど、ボンゴレにとって重要な何かなのだと雰囲気で伝わる。
方々から痛いくらいの視線が沢田さんに注がれ、隣にいる私にまで向けられている感覚に陥る。
その得も言われぬ恐怖のようなものに私は顔を上げている事が出来ず、咄嗟に俯いた。
そんな私とは対照的に、沢田さんは落ち着いた声で言葉を続ける。

「俺達がずっと探し続けていた“希望の光“」

“幸福をもたらす平和の象徴“。
そう謳われ、歴代のボスと共にボンゴレを支えた一人の女性。
不思議な力を持つとされ、人々から慕われた、唯一無二の存在。

沢田さんがこちらに向き直るのを気配で感じた。
ゆっくり顔を上げた私の目に、穏やかに微笑む沢田さんの表情が写り込む。
そしてこの後、彼が口にしたのは、自分の耳を疑うもので。

「ボンゴレファミリーは、名字名前を時期歌姫後継者候補として、正式に迎え入れる」



決 意 表 明

(『名字名前』歌姫の能力を受け継いでいるかも知れない娘の名だ)


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