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118.選ばれた世界 **


人懐っこい笑みを浮かべながら、白蘭は私に向かって右手を差し伸べる。



「さあ、約束は守って貰うよ。名前チャン、今から君は僕のモノだ。早く僕の元においでよ…」



拒否されると思っていないその態度に全力で反発したくなった。けれどチョイスに負けた以上、私は白蘭に従うしかない。



「………」



強く拳を握り締め、渋々立ち上がろうとした時、



「駄目だ、名前さん!!」



入江さんに引き留められる。治療を施して貰ったとは言え、まだ動ける状態ではないと言うのに。
無理矢理、身体を起こそうとする入江さんに、私は慌てて駆け寄った。



「駄目です入江さん!!動いては、また傷が――」

「じゃあ貴女も、白蘭さんの元に行こう何て思わないで下さい!!!!」



信じられない程大きな声で怒鳴られ、私は驚いたように瞳を見開く。

それに彼の言っている事は無茶苦茶だ。私とて、望んで白蘭の元に行こうなどとは思っていない。
きっと私が『嫌』と一言いえば、皆は必ず私を守ろうとしてくれる筈だ。

けれど、そうなった場合、ボンゴレファミリーはどうなるの?白蘭によってどのような目に合わされるか…。考えるだけで、恐ろしくて堪らない。



「貴方の気持ちは本当に嬉しい。けれど私は…」

「駄目だっ、駄目だっ、駄目だっ、駄目だ!!」



私の言葉を遮り、入江さんは白蘭を睨みつける。



「白蘭さん、約束なら僕らにもあった筈だ!覚えていますよね?大学時代、二人でやった最後のチョイスで僕が勝った。だが支払うモノが無くなった貴方はこう言った!!」


『――次にチョイスで遊ぶ時は、ハンデとして正チャンの好きな条件を何でも飲んであげるよ』



「今、それを執行します!!僕は“チョイスの再選”を希望する!!!!」



そして告げられた言葉に私は勿論、一同は絶句。

しかし、彼は既に動ける状態ではない。なのにチョイスの再選だ何て、そんなの無謀すぎる。必死に止めさせようとする私達だが、彼はその制止を聞き入れてくれなくて。



「白蘭さんの元に名前さんをやれば、彼はまた必ず貴女を悲しめる!あの人の隣で涙を流す貴女の姿を、僕は…、僕は何度も見てきたんだっっ」



世界が壊れていく様を、その世界を壊す者の隣で見ている事しか出来なかった、違う世界の私。

そんな己を恨み、涙する私の姿を、入江さんは過去と未来を行き来する度に目撃していたと言う。


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