その中には、きっと私達が出会っている未来がある事を信じ、入江さんは、もう一度10年後に行こうと決めたのだそうだ。
出来る限りの変化を起こし、前回の未来とは違った未来に変えてから。
「そして僕はまたタイムトラベルをした。確かに僕の未来は1回目と違っていたよ。けれど酷い未来に変わっていたんだ」
◇ ◇ ◇
次に行き着いた10年後の僕の居場所は、外国の町外れの飲み屋だった。
どうやら未来の僕は、ミュージシャンとしてそこで演奏をして働いていたみたいでね。おまけに、お金のトラブルまで抱えていたようで、ギャングに追われていたんだ。
一目散にそこから飛び出した僕は、人通りの多い、大通りに出た所で、望んでもいなかった『あの男』と再会してしまう。
そう。白蘭さんにね。
勿論、初めは驚いたよ。でも彼と出会ったのは違う世界での出来事だから、何とかやり過ごせば良いと考え、僕は直ぐにその場を去ろうとした。
「あれ?ちょっと待って。んー……君、何処かで会わなかったっけ?」
ところが僕の考えを白蘭さんは上回ったんだ。
彼は急に頭痛を訴え、その場に踞(うずくま)ると
「何か…分かり、そうだ……何かが…大事な事が解けそう、だよ……」
僕を見上げてこう言った。
「…君とは、何処か全然違う場所で会ったことがある。…!!違う世界でっ。場所は大学……君の名は…イ、リ、エ……」
名前まで言い当てられた時は心臓か止まるかと思ったよ。それと同時に気味が悪くなって、僕はその場を逃げ出したんだ。
そして気付いたら過去に戻っていたよ。
この時は僕も何が何だか分からなかったさ。
けれど、白蘭さんがこの時手に入れた能力は、この後のタイムトラベルで分かる事になる。
2回目の未来が許せなかった僕は未来を変える事を諦め、再び大学を目指す事にしたんだ。
わざわざ未来を変えなくとも、貴女との未来が繋がっているのなら、また巡り会えると信じてね。
けれど、どうしても未来を確かめたくなった僕は、1年後にもう一度タイムトラベルをしたんだ。
3回目のタイムトラベルで見た未来は、僕の創造をまたもや裏切った。
世界は荒廃し、戦いで焼け野原となっていた。
それだけじゃない。携帯端末から流れてくるのは、この争いを起こし、世界征服を成し遂げた独裁者の演説だけだった。
そして僕は見つけてしまったんだよ。その独裁者の隣で涙を流す……名前さん。貴女の姿をね。
未来の真相
(その独裁者こそが…白蘭さんだ)
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