「正一君死なないで!!」
「入江さあぁあんっ」
沢田さんと二人、ぐったりと地面に横たわる入江さんの名を呼び続ける。
何度も何度も呼び続けると、入江さんの瞼がフルリと揺れて、それからゆっくりと瞳が開かれた。
「「正一君!/入江さん!」」
「ほら、眼鏡だぜっ」
獄寺さんが傍に落ちていた眼鏡を拾い上げる。
「…綱吉、君…チョイスは……どう、なった」
息も絶え絶えに入江さんが告げた台詞に、沢田さんと獄寺さんは絶句。
けれど事実を伝えなければと、沢田さんが負けた事を話した瞬間、入江さんの表情は激変する。
「な、なんだって!!?」
声を荒げ、無理矢理起きあがろうとする入江さん。
「駄目です入江さん!!急に動いては傷が…っっ」
「そんな事は許されない!!勝たなきゃ!勝つんだ!!まだだ!戦うんだっ」
「だ、駄目だ正一君!」
「てめーっ、死にてぇのか!!!」
「死んだっていいさ!白蘭さんに勝てるなら、僕は喜んで死ぬ!!!!」
一瞬、思考が停止する。
何を言われたのか理解する事が出来なかった。
けれどそれは沢田さん達も同じらしく、呆然と入江さんを凝視したまま。
「どうしても、白蘭さんに……勝たなきゃ…っ」
分からない。どうして?どうしてこんな身体になってまで、入江さんが勝ちに拘(こだわ)るのか、私には…分からないよ。
「この戦いに、どんな意味があると言うんです」
ポツリと呟いた一言に、入江さんだけでなく、沢田さんや、獄寺さんまでもが私へと視線を移す。
「入江さんの命を賭けてまで私達が白蘭に勝たなければならない理由とは一体なんなのですか?」
彼の目を見れば分かる。
『死んでも構わない』と告げたその言葉が決して偽りなどではない事を。
けれど、それなら何故そこまでするのか、私には検討もつかないのだ。だから知りたいと思った。
「そうか。そうでしたね。貴女はこの戦いの事を、自分自身の事を知らされていないんでしたね」
「知らされていない?」
「ええ。全て話しますよ。白蘭さんの事も、そして、この時代の綱吉君が話さなかった真実も…」
入江さんは瞳を伏せ、静かな口調で話し始める。
◇ ◇ ◇
それは11年前。僕がまだ中学生だった頃に遡る。
当時、僕は君達と同じ、並盛町に住んでいた。
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