立ち上がる事もままならない状態の私を沢田さんが支えようとした時。
耳に装着した通信機から、仲間の声が響いた。
『こっちも倒したぜ』
声の主は山本さんだ。
彼の話では敵のターゲットも同時に倒れたと言う事らしい。つまりこの勝敗はドロー。引き分け。
「野球バカにしては良くやったっと言う所ですかね」
左腕を押さえつつ、こちらにやって来る人物を目にして、超化を解いた沢田さんが声を上げる。
「獄寺君!?良かった、無事だったんだね!!」
「申し訳ありません。守りを任されたのに…」
「そんな!良かった無事で。本当に良かった!!」
「オレなんかより入江のヤローが。それに…」
「…っ…、っ…」
未だに沢田さんの胸で泣き続ける私を獄寺さんが心配そうに見つめているのが気配で分かった。
私だって獄寺さんが無事で本当に嬉しい。嬉しいのに…。上手く言葉が出て来てくれないのだ。
何も伝えられないまま暫しの時間が過ぎ、そして、両者のターゲットマーカーの調査が終了する。
「ターゲットマーカーは体内の全生命エネルギーが2%以下になると消滅します。……入江氏の場合、2%を大きく下回り、更に下降し続けている為、“ターゲットマーカー消滅”と認めます」
『こちらもです。デイジー氏のターゲットマーカーも消滅と認めます』
結果は、やはりドロー。
チョイス戦の参加者、観覧者、審判までもがそう思いかけた次の瞬間。
「――ハハン。早とちりですよ……審判」
桔梗がそんな台詞を呟く。直後、通信機の向こうが急に騒がしくなって。
『なっ!!!』
『これは…っ』
山本さんとチェルベッロの声に交じり、聞こえて来たのは、間違いなく、
『…う〜ん…。やっぱ死ねないのか〜〜』
山本さんが倒した敵ターゲット・デイジーの声。
『そんな!!止めは刺してねーが完全に倒した筈』
「ど、どういう事!?」
「分かりません!何がどうなってやがる…っ」
混乱する沢田さんと獄寺さんに、地上へと降り立った桔梗が笑みを浮かべながら理由を聞かせる。
「デイジーは不死身の身体(アンデットボディー)を有していましてね。死ねないのが悩みと言う変わった男なのです」
「不死身だと!?ふざけた事ぬかしてんじゃね!!」
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