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114.力の暴走 ***


桔梗の右手が紫色に輝いた。その手には、幻騎士を死に追いやった『桔梗の葉』が握られていて。



(駄目!!)



桔梗がそれを放つ寸前、私は空いた右手を桔梗の前に翳(かざ)し、咄嗟に守りの歌を発動させる。

ここまでの至近距離で、しかも片手だけの状態では完全に防げる筈もなく、私の身体は反動で後方へと弾き飛ばされた。



「名前さん!!」



入江さんが私を振り返る。しかし、その間にも、桔梗は次なる攻撃を仕掛けようとしていて…。



「逃げて、入江さん!!」

「無駄ですよ」



私がそう叫んだのと、桔梗が雲桔梗の葉を放ったのは……同時の出来事。





「うあぁああああ!!!!」





入江さんの腹部に雲桔梗が貫通。目の前で、スローモーションのように倒れる彼の姿を、私はただただ呆然と眺める事しか出来なかったのだった。








◇ ◇ ◇


一方その頃、X BURNERで異空間を脱出した綱吉が二人の元へ駆けつける。



「正一!!名前!!!」



だがそこには地面に倒れ込んだまま微動だにしない入江と、そんな彼の傍に座り込む名前の姿が。



「ハハン。もう終わりましたよ」

「お前っっ」



頭に血の上った綱吉が、目にも留まらぬ速さで桔梗に肘鉄を食らわせた。
しかし、桔梗は涼しい顔で、その攻撃を回避。



「終わりと言ったでしょう。貴方と戦う理由はありません」

「くっ」



近距離で睨み合う両名。
だがその直後、ゾワリと全身にまとわりつくような異様な気配を感じて二人は同時に息を飲んだ。
気配の根元を探そうと辺りを見回した綱吉は、ある人物の異変に気付く。



(名前?)



――が、その異変に気付いた時には既に遅く、突如、名前の周りを、凄まじい風が包み込んだ。
風はゴオと言う騒音を響かせつつ彼女の周りを旋回すると、まるで矢のように四方へと飛び散り、


パンパンッパリン!!!!!


衝撃で、周辺ビルの窓全てが粉々に粉砕する。
雷の炎で硬化された筈の窓ガラスが一瞬で、だ。

一体何が起こったのか。混乱する綱吉の横で、同じく取り乱した状態の桔梗が小さな声で呟いた。



力の暴走


(破壊の力が目覚める)


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