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112.暗 雲 ***


瞳を揺らし、一点を見つめ続ける私に、入江さんは優しく微笑みかけた。



「僕なら平気ですよ」



そんなの嘘。本当は平気な訳がないのに。でも、それが心配をかけさせない為の気遣いだと分かるから、私も気にしないフリをしようと思ったの。



「入江さん、状況はどうなっているのでしょうか?沢田さん達は…?」

「先ず中に入りましょう。それから説明を――」

「正一!!」



続く筈の彼の言葉は、中から響いたスパナさんの声によって遮られる。
私と入江さんは一瞬顔を見合わせ、すぐさまユニット内へと駆け込んだ。



「どうしたんだスパナ」

「ボンゴレがターゲットから遠ざかっている」

「え?」



入江さんがレーダーを確認すると、確かにスパナさんの言う通り、沢田さんはターゲットから逆方向に遠ざかっていて…。



「綱吉君どうしたの?コースを外れてるよ?」

『…そんな筈はない。ナビの誘導通りに……!これは――っっ、さっきから同じ場所をぐるぐる回っている気がする』

「な…っ、こんな時に…コンタクトの…故障?」



それを聞いたスパナさんは頭を抱え愕然とした。
一方、ミルフィオーレの基地ユニットを発見した山本さんから攻撃許可を求める通信が入る。
だが今の状況では2対1で戦うと言うこちらの戦法が狂ってしまう。
そこで沢田さんのコンタクトが修復するまで待機するよう、入江さんが山本さんに指示を出した、次の瞬間、再びスパナさんが大きな声を上げた。



「レーダーを見ろ!!凄い勢いでこちらの囮が破壊されている!もう後6機しか残っていない!!」

「何だって!?」



彼らの言う囮(デコイ)とは私もフィールド内で見た、あの晴の炎の入ったカプセルの事らしい。
大量に打ち上げた筈のそれが、次々に破壊されていると二人は言うのだ。


ピーピーピーピー…!!


直後、鳴り響く警報音。慌ててレーダーを覗き込めば、これまた物凄い勢いで桔梗と言う男がこちらに向かっているのが見て分かった。何というスピード。これでは直ぐに此処を探し当てしまう!



「何故、此処に来て…」



それを見た入江さんが呟いた一言。その言葉に、私までもが底知れぬ不安を抱き始めるのだった。



暗 雲


(嫌な予感がする)


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