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112.暗 雲 **


それはそれは大きな入江さんの声が聞こえて来た。勿論、聞こえて来たのはそれだけではない。



『てンめー、うるっせーぞ、入江!!!!』

『正一、歌姫が無事で安心したのは分かるけど、声は落とした方が良い』



獄寺さんとスパナさんの声もだ。久々に聞く仲間達の声に私は安堵する。



『…大丈夫か、名前』



そして最後は、先程とは打って変わって落ち着いた声の沢田さん。彼は既に超(ハイパー)化し、ターゲットに向かって行動を開始しているようだ。
ならばこちらものんびりしている場合ではない。



「山本さん、私は大丈夫ですから、ターゲットの元に向かって下さい」

「で、でもよ…」

『心配ないよ山本君。名前さんには、ひとまず僕達の基地ユニットに非難して貰うつもりだから』

「基地ユニットに?」

『うん。彼女に渡した通信機にはGPS機能が搭載されていて、名前さんの位置はこちらで確認できる。その機能を活かせば、ユニットまで案内する事も出来るからね』



確かにこのままフィールド内で佇んで居るよりは、入江さん達と基地ユニットに居た方が安心だ。
それには山本さんも納得したようで、小刀の炎の噴射を弱めると、ゆっくり降下し、そして私の身体からそっと腕を離す。



「入江達が監視してるなら平気だと思うけど、周りには気をつけろよ」

「はい!山本さんも」

「嗚呼!!じゃ、後でな」



そう言って颯爽と飛び去る山本さんの姿を見送り、私は再び走り出した。
仲間の待つ、ボンゴレの基地ユニットに向けて。




◇ ◇ ◇


通信機から響く入江さんの指示を頼りに、どうにかボンゴレの基地ユニットに辿り着いた私。
乱れた息を整えようと大きく息を吸い込んだ時、ユニットの入り口部分が突然開いて、中から入江さんが飛び出して来た。



「名前さん!!」

「入江さん!大丈夫なのですか外に出たりして」

「今の所は…。それより、僕は名前さんが無事に此処まで辿り着けるか、そっちの方が心配で…」



そう洩らしつつ、お腹を押さえる入江さんに、笑みが零れそうになった。
けれど、その胸に明々と灯るターゲットマーカーを目にして、私の顔は一瞬で強ばってしまう。



(本当にずっと炎を灯し続けたままなのですね)


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