[携帯モード] [URL送信]
112.暗 雲


山本さんの腕にしがみつき、声を殺して泣いていると、彼が耳に着けた通信機から怒りに震える仲間の声が聞こえて来た。



『これが僕達が戦っているミルフィオーレの――白蘭さんの正体だっ』



声の主は入江正一さん。
彼の言葉に、私も、他の仲間達も、ただ黙り込む事しか出来ないでいた。





『――勝とう…』





ただ一人、ボンゴレ]世・沢田綱吉を除いては。



『世界の為とか、73とか言われてもピンと来なかったけど、白蘭がみんなを、そして名前さんを酷い目に合わせているのは間違いないんだっっ』

「さ、わだ…さん」



私はグッと唇を噛み締める。そうだ。どんなに辛いと思っていても、今は泣いている時ではない。
これ以上の悲しみを生み出さない為にも、このチョイスバトルに勝利し、白蘭から世界も、73も、必ず守らなければ!!



『よし!!一気に畳みかけよう!ターゲットを先に倒しさえすれば勝ち何だ!!……現在、僕等と奴等は5対2。数的に、2対1でターゲットと戦える僕等の方が、1対3で戦わなければならない敵より、ずっと早く倒せる』



――しかも、名前さんは既に山本君が奪取していて、敵のアタッカーである桔梗は、まだ囮(おとり)に翻弄されて僕の位置を把握できていない。



『獄寺君は守備を続行してくれ!綱吉君と山本君で、一気に空中からターゲットを撃破する!!』



その指示に「おお!!」と頷いた直後、山本さんは腕の中の私を見て、何故か訝しげな顔をした。



「……て、オレがターゲットに向かった後、名前はどうするんだ?一人にして大丈夫なのかよ?」

『その事なら心配ない。山本君、さっき僕が予備に渡したアレを名前さんに渡してくれないかい』



山本さんがゴソゴソとスーツの内側を探り出す。そして「ほい」と言って私に差し出したのは…。



「通信機?」



山本さんも装着している小さな通信機だった。



「入江がそれ着けてスイッチを入れろってさ」

「は、はい」



私は言われるままに、通信機を耳に装着。ピッとスイッチを押した瞬間。



『名前さんっ、大丈夫ですか!?怪我してませんかぁぁあ!!』



[←][→]

あきゅろす。
無料HPエムペ!