111.最後の笑顔 **
突如、幻騎士の鎧から雲属性の炎を帯びた桔梗の葉が生えて来たのだ。
『ハハン。悪く思わないで下さい幻騎士。役に立たぬ時に消せるよう、増殖する雲桔梗(カンパヌラ・ディ・ヌーヴォラを鎧に仕込んでおいたのです。白蘭様の命でね』
次の瞬間、幻騎士の顔色がサ…ッと一変。
「嘘をつくな桔梗!!」
『嘘ではありませんよ。白蘭様のお考えです。貴方を猿として扱う時から指示されていたのです』
「有り得ん!!白蘭様が俺を消すはずがない!」
幻騎士を――消、す?
その言葉は、私の耳にもはっきりと届いていた。
「白蘭様と話したい!通信を繋げ!!」
「それは成りません」
刹那、山本さんの隣に姿を現すチェルベッロ。
彼女はチョイス参加選手と、観覧者との通信は禁止されている、そう言って幻騎士の提案を却下。
『信じる、信じないは自由ですが貴方は白蘭様の“捨て駒に過ぎぬ”と言う事ですよ、幻騎士』
「戯れ言を抜かすな!白蘭様が俺を見捨てる事など有り得ん!!絶対にない!!!!………ぐあっっ…」
幻騎士を包む桔梗の葉はどんどん増殖して行き、ついに花が咲き始める。
「ぐあぁああああっ」
瞬間、幻騎士から一際大きな悲鳴が上がった。
一体何が起こっているのか、幻騎士と桔梗の会話を聞く事の出来ない私達には全く分からない。
山本さんも仲間から質問されているらしく、現在の状況を無線で皆に説明するので精一杯だった。
「白蘭様が俺を見捨てる筈がない!!桔梗ーっ、図ったなぁあああ!!!!」
地を這い、雲桔梗に身体を蝕(むしば)まれながらも幻騎士は叫び続ける。
「残念だったな桔梗!白蘭様は必ずまた俺を救って下さる!!この幻騎士こそが白蘭様のもっとも忠実なる下僕…っっ」
どうして?どうしてこんな目に合わされているのに、彼はまだ白蘭を信じ続けるの?何処までも純粋なその想いに、胸が締め付けられそうになる。
「我は白蘭様と共にあり!!……ぐぅうっっ」
相手は敵だ。それは分かっている。分かっているけど、このまま黙って見ているだけ何て――っ
「おいっ、名字!?」
突然幻騎士に向かって走り出した私を見て、山本さんが驚きの声を上げた。彼が驚くのも無理はない。私自身ですら自分が何をしようとしているのか分からないのだから。
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