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110.リベンジ ***


そして未だ上空に漂う数多の剣撃を見上げ、山本さんが剣を構えた刹那、



「時雨蒼燕流・総集奥義」



剣の柄の部分に施された装飾の形状が変化。それはまるで、空を舞う鳥が、羽を羽ばたかせるような、優雅な動きだった。



(一体、なにを―…)



固唾を飲んで見守っていた直後、何と山本さんは、小刀3本に炎を灯し、一直線に剣撃の中へ。



「うおおおお!!!」



真っ直ぐに振り上げられた山本さんの剣先から、凄まじい量の雨の炎が放出される。そして、彼が中心部に辿り着いた時、その炎が円を描くように剣撃全てを包み込んで、



“時雨之化”。



青一色に空が輝いた刹那、剣撃の動きが止まる。

いや。止まっているように見えたのだ。目を凝らして良く見ると、実際にはスローモーションのように限りなく動きが抑制されているのが分かる。



「己、小癪な!山本武、何処に消えやがった!?」



対する幻騎士は、自身の剣撃が妨げとなり、山本さんの姿を見失っているようだった。



「くそっ、分裂していてはパワーが足りぬ!!」



そう言って仕方なく分身を一つの身体に戻す幻騎士。しかし、彼はこの瞬間を待っていたのだ。



「――確かに、俺はアンタに一回負けた。だがそれはオレの未熟さのせいで、親父のくれた時雨蒼燕流は、いつだって完全無欠・最強無敵だ!!」



その声に促され、ハッと顔を上げると、そこには真正面から幻騎士に向かって行く彼――、山本武さんの姿があった。

しかし、真正面から攻撃など余りに無防すぎる。あれでは幻騎士に避けられてしまう。だが、幻騎士は動かなかった。いや、動けなかったのだ。

何故なら彼の足下。そこには剣撃を伝って流れ込んで来た雨の炎が!!



「何!!??」



雨の鎮静により、剣撃だけでなく幻騎士の動きまでもを停止に近づけた山本さんは、見る見る距離を縮めて行き、そして、





「(時雨蒼燕流・攻式八の型……篠突く雨!!)」





相手の懐(ふところ)に飛び込んだ瞬間、山本さんの暫撃は幻騎士を直撃。



「グァアアア!!!」



空には雨の炎で出来た水柱が舞い上がっていた。



リベンジ


(勝者・山本武)


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あきゅろす。
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