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110.リベンジ


山本さんから放たれる、凄まじい強さの炎に、私は、ただただ目を見開く事しか出来ないでいた。



(今までの雰囲気とは全く違う。これが…これが山本さんの覚悟の証)



纏(まと)った炎を鎮めると、山本さんは、いつの間にか上空へと回避していた幻騎士を見上げる。



「準備は出来たぜ、幻騎士」

「…良かろう。貴様を全力で葬るに値する剣士と認めてやる。――だが、後悔するなっ。これで俺に情けはなくなるっっ」



瞬間、幻騎士のリングが眩い光を放つ。しかしそれは背筋がゾッとするような禍々(まがまが)しいオーラを放っていて。それと同時に夥(おびただ)しい量の霧の炎が、幻騎士の身体を包み込んだ。



「ぬおおおおおお!!」



幻騎士の叫び声が響いた直後、目の前に漂っていた霧の炎が――消える。

辺りに視線を巡らせば、彼は私達の背後に移動していた。それも、恐ろしい悪魔に姿を変えて…。



「これ…は、まさか…」



話に聞いた、霧属性・最高ランクのヘルリング。そして、リングに己の精神を食わせると言う、ヘルリングの戦力倍加!!



「ハアァアアっ…フルパワーだ!!ヌゥゥ…力が何倍にも増殖する!!」



何と痛々しい姿だろうか。人間の形すら保てていないなんて…。私は無意識に口元を両手で覆う。



「――だが、何故だ!?何故これ程の力を持つ俺を認めてくれぬのだ!!!!何故、俺の方が優れているのに、トリカブトが真6弔花なのだぁ!!――神を…!白蘭様を守る霧の守護者はっ、誰より俺が適任だと言うのにぃっっ」



幻騎士の口から次々と溢れ出てくる不満・悪態の数々。それは、ヘルリングに精神を食わせた事により、彼自身が理性を失っている証拠であった。



「冥土の土産に良い事を教えてやる、山本武。……沢田綱吉に負けたのは俺の実力ではない!!」

「!!」

「あの時は奴の目に惑わされ、力の半分も出していないのだからなっ」



確かにメローネ基地での沢田さんとの戦闘時。機敏だった幻騎士の動きが急に鈍くなったとリボーンさんから聞いている。

つまり、沢田さんと戦った時より、今の幻騎士はレベルが上と言う事。



「山本さん」



私は不安と混乱の入り交じった瞳で、傍らに立つ山本さんを見上げた。

しかし、私を振り向いた彼の表情は普段と何一つ変わらない笑顔のまま。


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あきゅろす。
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