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109.朝利雨月の変則四刀 ***


それだけでも驚きだと言うのに、更に驚いたのはその回避方法だった。

山本さんは、自身の指に填めた“リングの炎の揺らぎ”を頼りに、幻海牛の攻撃を交わしている。

これは10年後の雲雀さんが、幻騎士の攻撃を回避していた方法と同じで。まさか、彼もその方法を収得していただ何て…。



(本当に凄い)



私は山本さんの首にしがみつきながら、その成長を肌で感じ、驚愕する。

けれど、彼の凄まじい成長振りに驚いていたのは私だけではなかった。



「――そこだ!!」



突然、山本さんが何もない場所に向けて2本の小刀を投げつけた。だがそこには、幻覚で姿を消した幻騎士の姿があって。



「(馬鹿な!?)」



2本の小刀で兜を挟まれた幻騎士は身動きが取れない。その隙に雨犬の次郎くんから3本目の刀を受け取り、山本さんは、今度こそ幻騎士に向かって刀を振り切った!!



「ぐあっ」



反動で巨木の外へと投げ出された幻騎士は、切りつけられた左肩を押さえつつ、地面に膝をつく。



「有り得ん!!完全に幻海牛と同調した俺の幻覚を見破るなど…っっ」

「へへ、作戦成功だな♪次郎に気を取られて、上の方には気が行ったなかったみてーだもんな」



言われるまま、上空を見上げる私と幻騎士。視線の先に見えたのは――、



「「雨燕!!??」」



もう一つの匣兵器。



「ああやって幻海牛が作った巨木に雨属性の炎を撒いてたんだ。そんで、雨属性の炎の特徴は“鎮静”だぜ?そして、その雨の炎を浴びた幻海牛の動きは鎮静の作用でどんどん鈍って遅くなって」



幻騎士のスピードは変わらないから、同調しているつもりがズレていく。

つまり『幻覚の動きのあっていない場所が幻騎士の位置』という事。



「あ、因みにこいつは『小次郎』ってんだ♪」



差し出した人差し指に小次郎くんが止まると、それを私に見せながら山本さんは楽しそうに笑う。



「――さてと。言っとくけどこれからだぜ、オレ達の本気は。もうお前に、名字は渡さねー…」



私を背中から降ろし、ゆっくりと立ち上がった山本さんの姿は、本当に頼もしくて…。迂闊にもトクリと胸が高鳴った。



『今回の修行で山本武はすげー事になるかもな』




(――ディーノさん、貴方が前に仰っていた事、本当になりましたよ)

「小次郎、形態変化!!」



山本さんの声に反応し、雨燕が物凄い早さで急降下する。そして、胸の前で構えた時雨金時と融合し、変化した刀は、強い雨の炎を纏った長刀に!

彼の武器こそ、私が後に聞く、初代雨の守護者で、全てを洗い流す恵みの村雨と謳われた――、



朝利雨月の変則四刀


(名前はオレが守る!)


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