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109.朝利雨月の変則四刀


(どう、して…どうして貴方がっ――幻騎士!!)



突如、姿を現した想定外の人物に、私は完全に言葉を失ってしまった。だって幻騎士はメローネ基地で私をさらった後、沢田さんと戦って敗れたと、そう聞いていたから!!



「俺との実力差は知っているな……山本武」



メローネ基地で見た、あの悲惨な光景が脳裏を過ぎる。平然と佇(たたず)む幻騎士の傍らで、剣を握り締しめたまま力なく横たわる山本さんの姿。

力の差は…歴然だった。



「ツキのない男よ」



ユラリ。幻騎士が手にした剣を振り上げる。そして、霧の炎を集中させ、



「――さらばだ」



振り下ろすと同時に、山本さんめがけて凄まじい剣撃が襲いかかった。


ドオオオン。


激しい衝撃音と共に、砂煙が舞い上がる。私は叫ぶ事も出来ずに呆然とその光景を見つめていた。

でも、異変は直ぐに起こる。立ちこめる煙の中、微かに動く気配を感じたのだ。ハッとして目を見開くと、辺りにはヒラヒラと舞う、漆黒の羽が。

その羽の舞い散る中、私は『彼』の姿を確認する。2本の刀を持ち、傷一つない山本さんの姿を。



「へへ。リベンジできるこん時を、待ってたぜ」

「山本さん!!!」



私は歓喜の声を上げた。



「…その刀を背負った犬が貴様のボンゴレ匣か」



幻騎士の問いかけに、私も山本さんの足下へ視線を向ける。そこには、開け放たれた水色のボンゴレ匣と、1本の刀を銜(くわ)えた雨犬の姿。



「まあ、そんな所だ。……秋田犬で『次郎』ってんだ。オレの小刀3本の面倒を見てくれてる」



そう言って山本さんが屈み込むと、雨犬の次郎くんは、甘えるように山本さんにじゃれついた。



「でもオレ、この前のアンタみたいに本当は刀4本使うんだ。……て事で4本目、取りに行って良いか?さっき弾かれちまってさ。あれがねーと名字を奪い返せねーんだ」

「まさか奪い返せると思っているのか?」

「嗚呼、勿論!!」



強い眼差しで、そう言い切る山本さんに、幻騎士の雰囲気が一変する。



「確かに多少は成長しているようだが、一度攻撃を凌(しの)いだ程度で」



――図に乗るな!!!


刹那、幻騎士の目がギラリと光り、同時に、山本さんに向かって複数の“何か”が近付いて行くのが気配で分かった。


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あきゅろす。
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