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11.集結の時 ***

 ◇ ◇ ◇

「おい、行かせちまって良かったのかよ」

半ば拉致する形で名前を連れ去ったビアンキ達を見送り、残された獄寺が小さく呟く。
ぼやきの相手は、この場に取り残されたもう一人の人物、雲雀恭弥だ。

「…行き先は解ってるからね。それに、下手な護衛がつくより、彼女達の方がまだ増しだよ」

雲雀の言う事はもっともだった。
正直そこいらの連中より、あの2人の方が余程腕が立つ。
護衛としては申し分ないだろう。

それに雲雀同様、獄寺にも彼女達の行き先には覚えがあった。
おそらく邸内に造られた女性専用の衣装ルームだろう。
笹川京子や三浦ハルが渡航した際、あれば便利だからと綱吉が提供した一室だ。
各々が持ち寄った物から、ボンゴレで用意した品まで、様々な代物があったと記憶している。
ビアンキやクロームも利用している筈だから、きっとそこに向かったのだろう。

その時、背後で雲雀が立ち上がるのを気配で感じた。
視線だけそちらにやると、視界の隅から消えようとする男に、獄寺がすかさず釘を差す。

「テメーも顔くらいは見せろよ、雲雀」

今回守護者を招集する話が、ビアンキが呼ばれたと言う事は、他にも綱吉が信頼する面子が揃う事になる。
そんな状況で群れる事を嫌う雲雀が顔を出す可能性は限りなく低い。
ただ名前の事も含め、これからについて何かしらの方向性が示されるだろうと獄寺は踏んでいる。
そんな重要な場に守護者の一人である雲雀が顔を見せない訳にはいかないのだ。

「………」

振り返らずとも、雲雀の不機嫌そうな様は手に取るように解る。
間髪入れずに『否』を唱えるだろう、そうも思っていた。

「………気が向いたらね」

けれど予想した答えとは違う反応を返され、獄寺は一瞬言葉に詰まる。
彼なりに名前の事を気にかけて、という事だろうか?
真意を確かめようにも、既にそこに雲雀の姿はなく、獄寺が一人佇むだけ。

サワサワと凪いだ風が頬を撫でる。
穏やかな風を浴びつつ、獄寺は静かに目を伏せた。

(何事もなく、無事に終われば良いがな)

そんな切なる願いを胸に秘め、獄寺もまた、一人歩き出すのだった。



集結の時

(どうか今夜(きょう)がつつがなく過ぎ去りますように──)


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