「ディーノさん!?」
突如、目の前に現れたディーノさんに、沢田さんは驚愕(きょうがく)の声を上げた。勿論、驚いているのは彼だけではない。何故なら、私達は、この場に転送装置で移動させられて来ているのだ。
装置が作動した時、あの場にディーノさんは居なかった筈。それなのに、どうして彼が此処にいるのかと、疑問に感じるのは至極当然の事だろう。
首を傾げる私に、ディーノさんは笑顔で答える。
「そんな不思議そうな顔するなって、名前。ワープの時に紛れ込んだんだよ。ずっと居たぜ」
「ずっと…ですか?」
「嗚呼。俺は“こいつらの家庭教師”だからな。来ない訳にはいかねーだろ?……それに、お前の事も心配だったしな」
そう告げた後、ディーノさんは雲雀さんの傍に歩み寄ると説得を始めた。
「考えてみろよ。このまま恭弥がチョイスに出れば、ルール違反でボンゴレは失格。名前は本当に白蘭のモノになっちまうんだ。そうなれば、並中の校歌どころか、名前にも二度と会えなくなる」
雲雀さんは左手にトンファーを構えたまま、無言で私に視線を向ける。
「それにツナ達がミルフィオーレに勝てば、その後は、どいつとでも・好きなだけ戦えるぜ?……少しの辛抱じゃねーか」
“誰とでも好きなだけ”
きっと、雲雀さんにとっては、何よりも魅力的な言葉だったのだろう。
「………急いでよ」
「嗚呼。分かった」
あれだけ難航していた説得が、あっさり承諾されてしまったのだから。
雲雀さんの性格を熟知しているディーノさんだからこそ出来る技なのだと思う。彼が一緒に来てくれて本当に助かった。
「ああ〜…。ダリ〜…」
――と、その時。ミルフィオーレ側から戦闘前には似付かわしくない、気の抜けた声が聞こえて来る。声の主は前にメローネ基地で観た、あの、
「マグマ風呂野郎!!」
平然と煮えたぎるマグマにつかっていた、無精ヒゲの、赤い髪の男性。
「白蘭様〜。悪いが出番もねーし、嫌になって来ました〜〜〜〜〜…」
「申し訳ありません、白蘭様。ザクロがダレて来ました」
ザクロと呼ばれた赤毛の男性。彼は力なさ気に、その場に蹲(うずくま)ると、顎を付き、地面に寝そべってしまった。
桔梗から報告を受けた白蘭は事を急ぐ為、今度はミルフィオーレの参加メンバーを紹介し始める。
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