(この人いつの間に!?)
「…僕チン……デイジー。これ…、…あげる」
今にも朽ちてしまいそうな枯れた花を、ケース越しの私に差し出しながらデイジーがそう告げた。
――と、次の瞬間。
「駄目ですよデイジー」
ビシッと音を立てつつ、デイジーの顔に何かが巻き付き、物凄い勢いで引き戻して行く。彼を戻したのも、やはりこの男。
「名前様が混乱されているではありませんか」
桔梗だった。私はぎゅっと両手を握り締め、桔梗を睨みつける。その視線に気付いた桔梗は特に気にした様子もなく、穏やかな笑みを私に向けた。
「申し訳ありません、私がちょっと目を離した隙に…。デイジーは貴女のように美しく、滅び行く者に目がないんです」
私はぐっ唇を噛み締める。美しく何て、私には嫌味にしか聞こえないよ。
「さ〜て、それじゃあお互いの参加メンバーを発表しようか♪…あ、此処は“唯一”相談して決められるトコだからね」
「――白蘭さん」
此処で入江さんが前に出る。そして「リングを持たない自分は無属性で良いのか」と訊ねたのだ。
本来ならば、彼は晴の属性に分類される人。白蘭も、彼の提案に一瞬だけ笑みを消し去ったが、直ぐに笑顔を作り「特別に良いかな」と承諾した。
それを聞いた入江さんは、沢田さんに進言する。
「だったら綱吉君。僕らのメンバーは決まりだ」
大空に沢田さん。嵐は獄寺さん。雨は山本さん。そして無属性は、自分とスパナさんが適任だと入江さんは告げたのだ。
彼の提案に意義を唱える者もいたが、リボーンさんの「全員戦闘経験者の、このメンバーで良い」という言葉や「ジャイロルーレットの結果は決して悪くない」と言う入江さんの説得に、誰もが納得しかけた――その時。
「…そんな理由で納得すると思ってるの?」
やはり、納得していないメンバーが……約1名。
「…それに彼女は並中の所有物だ。勝手に持ち出す事は風紀委員が許さない。…よって、制裁を加える為にも僕は出るよ」
戦闘心剥き出しの風紀委員長、雲雀恭弥さんだった。いつ私が並中の所有物になったのか、突っ込みたいのは山々なのだが、今はそんな事を気にしている場合ではない。彼を止めなければ、ルール違反で失格になってしまう可能性があるから!
沢田さんと入江さんが慌てて止めに入るが、雲雀さんは一向に聞く耳を持ってくれない。誰も雲雀さんを止める事が出来ないのかと、皆が途方に暮れていた時、私達の元に天の助けが舞い降りた。
「待てって恭弥」
聞き覚えのある声に全員が背後を振り返る。皆が振り向いたその先。そこに居たのは間違いなく、
「…ったく、しょーがねー奴だな、お前は」
6つの花
(此処に居る筈のない、跳ね馬・ディーノさん)
[←][→]