入江の凄まじい剣幕に、綱吉は「入江さん?」と驚いた顔を見せた。そんな綱吉に入江は告げる。
――他人行儀な呼び方は止めてくれないか…と。
「僕はもう君達の仲間なんだ。だから『正一』と、呼び捨てで良いよ」
「いや、それは…っ」
幾らこの時代の自分達が同い年位とは言え、過去から来た綱吉が未来の入江を呼び捨てに出来る訳がない。しかし、仲間だと言ってくれた彼の気持ちは本当に嬉しいから。
「じゃあ『正一君』で」
思い切って名前呼びにさせて貰う事にした。それには入江も納得したらしく、大きく頷い見せる。
――と、そこで入江はある事に気が付いた。部屋の中を見渡しても名前の姿が見当たらないのだ。
「名前さんは何処に?」
「私なら此処に――」
刹那、彼の後ろから声が響いて、その場の全員が声の方角を振り返った。だが、入り口付近に佇む名前の姿を目にした瞬間、言葉を失う綱吉達。
彼らが言葉を失うのも無理はない。名前が身に纏(まと)っていたのは、戦闘服とは程遠い、シンプルなデザインの純白のドレスだったからだ。
「名前さん…その格好」
「は、はい。リボーンさんにこの服を着るようにと渡されたんです。あの、本当にこの服装で良かったのでしょうか///」
微かに頬を染めつつ、名前は不安げにリボーンに訊ねた。何故って、これから皆が向かおうとしているのは戦いの場なのだ。そんな場所にシンプルとは言え、ドレスを着ていくなんて。名前には理解出来なかったらしい。
「嗚呼。その格好で間違いないぞ。何せ、それが戦場に赴(おもむ)く時の、歌姫の正装だからな」
「え?このドレスが?」
「正確には白い服がだ」
リボーンの話によると、歴代ファミリーは歌姫の身に、敢えて汚れの目立つ純白の衣を纏(まと)わせる事で、戦いの士気を上げていたのだと言う。
それは、ボンゴレの宝である歌姫を戦いの血で汚させない為だったとリボーンは語って聞かせた。
「だからお前らも名前を汚すんじゃねーぞ。例え戦いで勝利したとしても、歌姫が傷つけば、それは本当の勝利とは言わなねー。お前らは実質……敗北した事になるんだ」
それが古(いにしえ)から伝わるボンゴレの掟であり、勝利の規則。
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