その言葉を聞いた瞬間、スクアーロさんは物凄い勢いで、ある方向を睨みつけた。視線の先に居たのは沢田さん…ではなく、その向こう側に居る、
「山本、さん?」
それに気付いた時にはスクアーロさんはコツリ、コツリと歩みを進め、
「跳ね馬ぁ!名前の目を塞いでろぉ!!!」
大きな大きな彼の声が響いた直後、私の視界は本当に塞がれ、そして…。
ガッ、ドガッ、バキッ。
聞こえて来たのは“誰かが何かを殴りつける音”。視界を塞がれた私には何が起こっているのか全く理解できなかった。
「山本おお!!!」
けれど悲鳴に近い沢田さんの叫び声に、嫌でも状況を把握し始める。恐らく殴られているのは山本さんで、殴っているのは…スクアーロさんだと。
どの位の間その不快な音を聞いていただろうか。音が止んだと同時に私の目を塞いでいたディーノさんの手が離れて行く。
そして私の視界に飛び込んで来たのは……気を失った山本さんと、そんな山本さんを肩に担ぐスクアーロさんの姿だった。
「本当は俺の手で殺っちまいてぇ位だぜ。このカスは預かって行くぞぉ」
一瞬だけ私に視線を移したスクアーロさん。けれど彼は何も告げずに山本さんと姿を消して行く。
「山本さん。スクアーロさん」
不安そうに二人の消えた廊下を見つめていると、不意に肩を叩かれて。
「名前、此処はスクアーロに任せるんだ」
「ディーノさん」
「山本の事は、俺達より分かってる。大丈夫だ」
そう言って優しく肩を抱き寄せるディーノさんに、私は小さく頷いて見せた。――と、次の瞬間!
「沢田ああああ!!」
沢田さんの名を叫んだ笹川さんが突然彼を殴り飛ばしたのだ。反動で床へと倒れ込む沢田さんを、笹川さんは歯を食いしばりながら見下ろし、
「やはり京子を巻き込んだ事は許せん……だがオレも男だ!この一発で次に進む事にする!!」
そして、まるで自分に言い聞かせるように彼はそう宣言したのだった。
この日は皆の溜まっていたモヤモヤが溢れ出した、本当に酷い一日で…。
でも、この日を栄えに、皆が変わり始めたの。
自分のすべき事をやり、それが一つの方向に噛み合って行って…。
そして決戦の日を迎える頃には全員の修行は完璧に仕上がったのだった。
同じココロで
(いざ、チョイス戦へ)
[←][→]