瞳を潤ませつつ、そう問いただす笹川さんに激しく胸が痛んだ。沢田さんも一瞬だけ顔を顰(しか)めて。けれど、意を決したように真実を伝える。
「――ち、ちゃんと聞いてくれました」
京子さんは、全てを受け止めてくれた……と。
それを聞いた笹川さんはハッと瞳を見開いた。
「ツナの判断は間違ってなかったと思うぜ、了平。…この状況では遅かれ早かれ、真実を話さざる終えなかっただろう」
ディーノさんも沢田さんをフォローするように言葉を発する。だから私も笹川さんに語りかけた。
「笹川さん、私は京子さんを信じています」
「…名字?」
「確かに真実を知って辛い思いをしてしまったかも知れない。けれど、それで弱音を吐くような、そんな心の弱い人ではありません…京子さんは」
「!!」
本来なら、私がこんな事を口にしなくても笹川さんなら分かっている筈なのだ。でも今は妹を心配する余りその事が見えなくなっているのだろう。
だからどうか気付いて。貴方の大切な京子さんの強さを。彼女が、そんな弱い人間ではない事を。
「………」
ディーノさんや私に諭され、笹川さんは握り締めた拳をゆっくりと真下に降ろす。静寂が辺りを包み込む中、ふとリボーンさんが疑問を口にした。
「――にしても、白蘭の奴……どうやって回線に入り込んだんだ?」
言われてみればそうだ。この基地のセキュリティーは万全の筈。それなのに、こうも簡単に進入を許すなんて――。
「セキュリティーがザルなんだぁ!」
突然、背後から響いたその声に私は直ぐ様、後ろを振り返った。だって、だって今の声は――!!
「アマチュア共がぁ!」
私も良く知る、ボンゴレ独立暗殺部隊所属のスクアーロさんの声だから。
「ど、どうしてスクアーロさんがこちらに!?」
突然彼がやって来た理由やら、でもまた会えた嬉しさやらで混乱する私。しかし、そんな私にお構いなしのスクアーロさんはズカズカと歩み寄り、
「土産だぁ」
「え?私に?」
何故か大きなマグロを差し出したの。ぽかんと呆ける私に代わってディーノさんがそれを受け取っていたけど何故マグロ?
しきりに瞬きを繰り返す私を横目に、ディーノさんは笑顔でこう告げる。
生徒がお待ちかねだと。
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