「……知らないね」
全く聞く耳を持たない雲雀さんに、ディーノさんは「やれやれ」とそれはそれは大きな溜息を零した。しかし、その直後に何かを思い立ったらしく、ふっと口元を綻ばせ、
「――なら、俺に一撃でも攻撃できたら名前を独り占めさせてやる」
とんでもない事を口にしたのだ!!
「名前と過ごしたいと思ってるのが自分だけだと思うなよ、恭弥」
ディーノさんの挑発的な言葉に、雲雀さんはゆらりと起き上がり、即座にトンファーを構える。
「…並中(つまり僕)のものに手を出すつもり?」
「名前は並中(恭弥)だけのものじゃない筈だぜ」
「…咬み殺す」
両者、互いに愛用の武器を構え、戦闘態勢に突入。余りに突然の展開に、私は一人置いてきぼりの状態だ。ぽかんとした表情で、目の前の光景を見上げていると、背後からポンと肩を叩かれた。
振り返ると、そこには見覚えのある顔が二つ。
「く、草壁さん!ロマーリオさんも!」
「ボンゴレの姫さんはこっちに来てな」
「え?」
「そこにいては、危険です。我々と共に離れた場所に移動しましょう」
訳も分からぬまま二人に促され、私は屋上の入り口付近へと移動する。
すると、それを見計らったかのように雲雀さん達の戦闘が開始された。二人とも凄い早さだ。私の肉眼では追いきれない。
「こりゃまた、何時もに増して激しいな」
「そうですね」
目には見えない(私だけ)戦いを眺めながら、草壁さんとロマーリオさんは歓喜の声を上げる。
「やっぱり姫さんが居ると志気が上がるね〜」
「流石です名前さん!」
感心する二人の部下を余所(よそ)に、雲雀さんとディーノさんの戦いは更に激化して行く。
そして二人の戦いを傍観していると、いつの間にか日は西へと傾き、夕焼け空が並中の屋上を包み込んでいた。その後、私がここに居る事を聞きつけた沢田さんと京子さんが迎えに来てくれて…。
「名前さん。オレ……京子ちゃんに話したよ。ミルフィオーレの事も、白蘭の事も、匣の事も全部。もう隠すのは止める事にした。だって京子ちゃんも、ハルも、オレ達の“仲間”だから!」
どうやら今回の騒動は無事解決したみたいだ。
告白の時
(真実を知った京子さん達は辛い事実に直面すると思う。でもきっと、彼女達なら乗り越えられる。私はそう…信じてる)
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