「ディーノ…さん?」
突如、ボンゴレの地下アジトにやって来た、キャバッローネファミリーのボス・ディーノさん。
――どうしてディーノさんが此処に?私は床に座り込んだまま、予想外の来客に目を見開く。
それに気になる事は他にもあった。さっきディーノさんが口にした台詞。
「バジルの答えが正解って、どういう意味だよ」
それは他の皆さんも同じだったみたいで、不機嫌オーラ全開の獄寺さんがディーノさんに訊ねる。
「意味もなにも、言葉通りだ。その匣は名前の事を守ろうとしたんだよ」
「…私を?」
「嗚呼。そうだ」
床に転がる大空のボンゴレ匣。それを見つながら私は訝しげな顔をした。
匣の持ち主である沢田さんを襲っていながら、私の事を守ろうとしただ何て…。何と言う矛盾。
獄寺さんのように、入江さんが不良品を渡したとまでは思っていないが、彼も気付かぬ内に異常が発生していた…という事は考えられると思う。
だって、そうでもなければ、こんな不可解な事になる筈はないのだから。
「そんな怪訝そうな顔すんなって。これはマジな話なんだか――」
『ら』とディーノさんの話は続く……筈だった。
けれど、最後の言葉よりも先に『ドテーン!』という、それはそれは大きな物音が辺りに響いて、その場にいた全員が一斉に視線を上げると…、
「いっつつつ」
目の前には、跨った天馬のアニマル匣から降りようとしたらしいディーノさんが、バランスを崩してズッコケている姿が。
「おっかしーな。今日はやけに転ぶっつーか、ドジるっつーか。……1qも離れてねー場所から此処に来るのに“3時間”も掛かっちまったし」
そこで私はハタと気付く。部下の人達の姿が…何処にも見当たらない。
――これはまさか?
「あ、あのディーノさん。ロマーリオさんはご一緒ではないのですかι」
「ん?3時間前に草壁と飲みに行かせたぜ」
……嗚呼、やっぱり。それならこの“どじっ子”ぷりにも納得が行く。沢田さん達も「まさか」と気付き始めたみたいだ。
「ね、ねえ名前さん。ディーノさんて、さ。その……もしかして?」
沢田さんの言いたい事は直ぐに分かった。恐らく『まだ部下の人の前でしか力が出せないのか?』そう訊ねたいのだろう。
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