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98.天翔る 天馬 **


山本を筆頭に、4人は名前の元へと駆け出した。綱吉が怪物を押さえつけている今がチャンスだと考えたからだ。けれど、



「っ、みんな避けろ!!」



切羽詰まった綱吉の声が頭上から響いた直後、4人の行く手を阻むように、何かが立ちはだかる。

獄寺達は瞬時に足を止め、前方の様子を窺った。そして自分達を阻んだ正体を目にして驚愕する。



「な、いつの間に!?」



彼らの前方に現れたのは先程まで綱吉が押さえつけていた炎の怪物。しかもその怪物は名前を逃がさないよう、彼女の周りを炎で取り囲んだのだ。



「名前!!!」



それを目にした綱吉が一直線に怪物へと向かって行く。けれど、それよりも先に怪物の纏(まと)った炎が綱吉の手足を拘束。動きを封じられた。



「くっ」



綱吉は必死にその拘束を解こうとするが、



(…何てパワーだ!解けない!!)



更に拘束は強まって行く。その様子を見ていた獄寺は、キッと唇を噛み締め、自身の指に填(は)めたリングに炎を灯す。



「のやろ!!!」

「待って下さい!獄寺殿の嵐の匣兵器の特性は“分解”。下手をすれば沢田殿の匣兵器を傷つける恐れがあります!!」

「だったらどうしろっつーんだ!!このままじゃ名前には近付けねーし、10代目だって…っっ」

「落ち着いて下さい獄寺殿。拙者が静めます」



そう言って自身のリングに炎を灯したバジルは、獄寺達に下がっているよう伝え、更に部屋の奥へと足を踏み入れた。



「いくぞアルフィン」



――開匣!!

そして手にした匣に炎を注入した瞬間、中から飛び出して来たのは、青色の炎を纏った雨イルカ。



(――アルフィン。“あれ”でいこう!!)

『キュイ!!』



バジルは脳波を使って雨イルカに指示を出し、その指示を受けた雨イルカが自身の鰭(ひれ)から複数の何かを発射させる。
その何かは一直線に怪物の元へと飛んで行き、



『ギャアア!!』



雨イルカの攻撃を受けた怪物は途端に苦しみ始めた。今の技は『ドルフィン・エッジ』といい、体内を巡る雨の鎮静の炎の刃(やいば)。謂わば対匣兵器用の“麻酔弾”だ。



(これで大人しくなる筈)



バジルはそう考えていた。しかし、綱吉を拘束し、名前を逃がさぬよう取り囲んでいた怪物は、ギッと雨イルカを睨みつけ、再度発射されたドルフィン・エッジを大空の炎で跳ね返したのだ。


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