けれど沢田さんは、私の言葉を否定するように、大きく首を横に振る。
「違う、違うよ!白蘭は本気だ!!本気で名前さんの事が…っっ」
その余りに必死な物言いに、私は一瞬言葉に詰まってしまった。そんな私を見上げながら、沢田さんは更に言葉を続ける。
「オレ、分かるんだ。白蘭の“気持ち”が。……分かりたく何かないけど、凄く良く分かる」
「何故?」
当然の疑問だった。彼が此処まで言い切る根拠は何なのか。それを知りたくて問い返した私に、沢田さんが告げたのは…
「――名前さんを思う気持ちが、同じだから…」
そんな答え。トクリと鼓動が高鳴った。瞬時に頬が紅潮する。顔が熱い。
赤く染まった頬を見られぬように顔を背けようとするが、真剣な瞳に見上げられて、目を逸らす事が出来ない。そうこうする内に沢田さんの右手が私の左手を握り締めて。
「だから尚更、貴女の事は渡せない。渡したくないって……そう思う」
頬は更に熱を増し、どうすれば良いのか分からない。兎に角何か言わなければ。そう思い、乾いた口を開き掛けたその時。
コトリ。
部屋の中から微かな物音が聞こえたのだ。私はハッと顔を上げ、部屋の中へと視線を巡らせる。
けれどそこには音の原因になりうる人は疎か、物すら存在しない。それなら今の音は一体…何?
目を凝らして再び部屋の中を観察する。そして、ベッドサイドで目を留めた瞬間、私は「ひっ」と小さく声を洩らした。
「名前さん!!?」
その異変に沢田さんも瞬時に気が付いたようで、蜂蜜色の瞳が心配そうにこちらを見上げている。私は「あ…あ、れ」と声を震わせながら沢田さんの背後を指し示した。
その指に導かれるように、自身の後ろを振り返った沢田さんは驚愕する。
「Σんな!??」
彼が驚くのも無理はない。何故なら私達の視線の先には、何もしていないのに独りでに動き出す、沢田さんのボンゴレ匣があったのだから…。
◇ ◇ ◇
「どどど、どうなってるの!?炎も注入してないのに勝手に動く何て!」
二人並んでサイドテーブルに置かれたボンゴレ匣を凝視する。何もしていないのに勝手に動き出すとは、何というホラー。
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