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95.あたたかい場所 ***


『白蘭さんの話では、六道骸はミルフィオーレの兵士に憑依していたらしい。それに気付いた白蘭さん自身の手で――』




あの時の骸さんと白蘭の一戦は、忘れられない記憶として私の頭に刻み込まれている。どんなに彼は無事だと言い聞かせても、記憶が薄れる寸前の


グシャリ。



あの不快な音が邪魔をして、私の気持ちを鈍らせていた。けれど入江さんは、そんな私の不安を打ち消してくれたのだ。



『だが、僕はそうは思っていない。……何故なら、復讐者の死亡リストに六道骸の名前は上がってこなかったからね』




――だから生きているよ。それは間違いない。

その言葉を聞いた時は本当に嬉しくて…。でも、それならどうして?どうして骸さんは姿を見せてはくれないのだろう。

もし姿を見せられない理由があるのなら、私はその理由を知りたい。自分自身の為にも。そして同じように心配しているクロームさんの為にも…。



「今、骸さんがどうしているかだけでも何か分からないでしょうか?」



私は胸の前で両手を握り締め、縋るような思いで入江さんを見つめた。



「…すみません、名前さん。僕にもあれ以上の事は分からないんです」



けれど、入江さんから返って来たのは……何となく予想していた答え。

分かっていた事なのに、私は何を聞いているんだろう。復讐者は特殊な組織。そう簡単に情報が入って来る訳がない。



「すみません。貴女のお役に立てなくて…。でも何か情報が入ったら、必ず知らせますから!」

「…は、い。ありがとうございます入江さん」




◇ ◇ ◇


メローネ基地跡から戻って来た直後。私は重い足を引きずりながら、ある人の部屋を訪ねていた。



「名前です。少し、宜しいでしょうか?」



沈黙の後、目の前の扉がゆっくりと開かれ、中から顔を覗かせたのは…。



「…どうしたの?」



クローム髑髏さん。



「夜分遅くにお邪魔してすみません。急にクロームさんの顔が見たくなって、来てしまいました」

「私、の?」



「はい」と笑顔を向ければクロームさんは更に瞳を丸くする。でもそこでふと違和感に気付いた。

彼女の纏(まと)う雰囲気が、これまでとは明らかに違っている事に…。


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あきゅろす。
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